掲載媒体:NIKKEI NET
米国のIT業界は、二つの大きな訴訟問題で揺れている。一つは、UNIXのソースコードをめぐる訴訟であり、もう一つは全米レコード協会(RIAA)による数千人の個人をターゲットにした訴訟である。それぞれGNU/Linuxコミュニティ、P2Pコミュニティに与える影響の大きさから注目が集まっている。そのほか、ブログ機能を追加した新ツールバーを発表したグーグル、雇用情勢の悪化に歯止めがかからず失業率が上昇するシリコンバレーのニュースを取り上げた。(長野弘子/ITジャーナリスト)
■UNIXとLinuxのソースコードをめぐる戦い(6/26 ZDNet)
フリーソフトウェアの生みの親、リチャード・ストールマン氏は、UNIXとLinuxのソースコードをめぐりSCOが起こしている訴訟問題に対して、反論をZDNetに寄稿した。SCOは今年3月、「UNIXのソースコードを許可なくLinuxに持ち込んだ」としてIBMを提訴。さらに、LinuxにUNIXコードの膨大なコピーがあるとして、Linuxのハードウェアメーカーやディストリビュータを訴える構えだ。Linuxの導入を差し控える企業も登場し、GNU/Linuxコミュニティは当惑を隠せない様子だ。本記事でストールマン氏は、解決策の一つとして、訴訟対象であるLinuxカーネルではなくHurdやBSDを使うことを提案している。また、SCOの主張する「知的財産」という概念が、著作権、特許、商標という異なる概念を統合した、理論的に間違った概念だと同氏が指摘しているのは興味深い。
■RIAAの個人攻撃に、P2Pソフト会社が反発(6/26 ロイター)
全米レコード協会(RIAA)は25日、ファイル交換ソフトユーザーである数千人に対して大規模な訴訟を行うことを明らかにしたが、これに対して、ファイル交換ソフト「モーフィアス」を提供するストリームキャスト社は26日、RIAAに対抗するためのロビー活動を行うことを明らかにした。同社はRIAAから提訴されていたが、4月28日、連邦裁判所判事から同ソフトは著作権法に違反しないという判決を勝ち取っている。RIAAはその後、ターゲットを個人に絞り、カザーとモーフィアスを利用する20万人の個人ユーザーに対して、警告書を送りつけた。RIAAは、音楽交換ソフトの登場により音楽CDの売上が3年連続で下落し、損害は年間約43億ドルにおよぶと主張している。しかし、4月末に開設されたアップルの「iTunesミュージックストア」では、開設して1週間で100万以上の楽曲が販売された。ネット音楽市場拡大への期待が高まるなか、RIAAがこのままP2Pソフトユーザーを攻撃すれば、潜在的な顧客を失い逆効果になるだろう。
■ブログ機能、グーグルの新ツールバーに追加(6/28 Internet.com)
グーグルは、ブログ更新機能をそなえたブラウザーツールバーの新バージョン『Toolbar 2.0』を発表した。同ツールは、Webブラウザーに統合して様々な機能を提供するプログラムで、新バージョンでは今年2月に買収したパイラの技術が組み込まれている。具体的には、自分のブログにほかのサイトのコンテンツを簡単に掲載できる「ブログ・ディス」、ポップアップ広告を遮断する「ポップアップ・ブロッカー」、ウェブサイトへの自動入力ができる「オートフィル」などが追加された。グーグルが新機能の追加で順調に市場を拡大する一方で、マイクロソフトが利益率の高い商用検索サービスに参入しようとしている。同社は19日に検索ツール「MSNBot」を立ち上げ、今後は同社のブラウザー「インターネット・エクスプローラー」に同技術を用いた検索ツールバーを組み込む予定。
■シリコンバレーの失業率、8%に(6/27 San Jose Bizjournals)
長引く不況から、米国の雇用情勢は悪化の一途をたどっている。IT業界では過去2年間で50万以上の職が失われており、とくにハイテク企業が集積したカリフォルニア州サンタクララ郡では、今年5月の失業率は8%に達した。カリフォルニア州雇用開発部門によると、この数字は州平均の6.6%を大きく上回っている。企業の収益悪化によるレイオフのほか、安価な労働力を求めてインドなどの外国へバックオフィス業務をアウトソーシングするIT企業が増えているのも要因となっている。雇用が減少するなか仕事を探す人は増える一方であり、学生向けのインターンシップでさえも、採用をめぐって激しい競争が繰り広げられているという。