短編ビデオ制作会社のHonkworm設立者へインタビュー
文/写真:長野弘子
掲載媒体:ASAHIパソコン
日本でもADSL接続サービスがいよいよ本格化してきたが、米国ではISDNを含めた家庭のブロードバンドユーザーは昨年12月には1200万人近くまで達しているという結果がNielsen NetRatingsから発表された。こうしたブロードバンドユーザーのために広帯域コンテンツを開発する様々な企業が登場しているが、その中でも質の高い短編ビデオを多数制作しているHonkworm Internationalを訪ねてみた。
●カルト的な人気を呼んだ『FishBar』
シアトルに本社を構える同社は、若者を対象にした2〜3分の短編アニメを制作するプロダクションであり、バーでたむろする魚を描いたコメディ短編『FishBar』は世界中からカルト的な人気を集めている。このショーはMTVのテレビ番組にも登場し、NikeやBudweiserといった大手企業スポンサーを獲得した。同社の短編ビデオの特徴は、接続速度が28Kbpsや56Kbpsといったナローバンドでもビデオを十分に楽しめることだ。長編ではないので仕事の合間の数分間に息抜きとしてちょっと観るといったことができる。創設者のJohan Liedgren氏は「会社を設立した1997年には、ウェブに娯楽的な要素がほとんどない状態でした。そこで、我々がそれを提供しようと考えたのです」と語る。同氏はスウェーデン出身で、同社を設立する前はMicrosoftで7年間働いた経験を持つ。同社は『FishBar』のほかにも、シリコンバレーの若者達をシニカルに描いたコメディ『Siliconites』、『Dog In A Box』など数々の短編を発表している。
●淘汰されるブロードバンドコンテンツ
この成長市場にハリウッドなどの既存勢力も続々参入しており、1999年10月にはスピルバーグ監督の会社であるDreamworksが短編ビデオ配信サイトの「POP.com」を、同11月にはWarner Bros.が総合娯楽サイトの「Entertaindom.com」を立ち上げ、大きな話題を呼んだ。しかし、米国のドットコムバブルが崩壊した2000年以降はコンテンツ企業の倒産やレイオフが相次ぎ、ネットTV企業の草分け的存在であったPseudo ProgramsおよびDENの操業停止という象徴的な出来事が起こった。また、通称Napsterのビデオ版と呼ばれたScourも廃業に至り、結果的にはPOP.comは大幅な事業計画の縮小、Entertaindom.comはサイト閉鎖への道を辿るという憂き目に遭っている。
こうした状況に対して、Liedgren氏は利益の出るビジネスモデルを確立していない企業はどんどん淘汰されていくと主張する。「私達は、短編ビデオの制作、コンテンツのシンジケート以外にも、例えば短編ビデオの中で主人公が飲んでいるビールにBudweiserの赤いロゴを入れるといったような広告手法でスポンサーを獲得しています。バナー広告では不可能だった効果的なブランド構築を広告主に提供できます」と語る。
●リッチメディア広告で生き残りをはかる
それでは、バナー広告でブランド構築はできないのだろうか?同氏は、難しいと考えている。「映画館で映画を観るとき、面白くなくても黙って観る人達は上の世代で、若い世代は席を離れたり友人とずっと話したりしています。こうした世代を惹きつけるためには、より高い娯楽性を持つ広告が必要になります。Honkwormの短編アニメはみな口コミで広がっていきました。こうした娯楽的な要素を盛り込んだ広告が、ウェブ上でのブランド構築には不可欠になります」と語る。欧州市場にもコンテンツを提供している同社は、これから本格的に日本に進出するという。今後は、日本製のビールを手にした魚たちを見ることができるかもしれない。(2001年3月)
写真1:Honkworm International創設者のJohan Liedgren氏。
写真2:カルト的な人気を誇る『FishBar』:同社サイト(http://www.honkworm.com/shows.htm)から観ることができる。
写真3:同社のオフィス風景。シアトル企業としては珍しくニューヨークスタイルのロフト。