テレマティクス企業InfoMove、日本進出を狙う
文/写真:長野弘子
掲載媒体:ASAHIパソコン
シアトルと言えば、マリナーズの佐々木、スターバックスコーヒー、はたまたジミ・ヘンドリックスなどを思い浮かべる人も多いだろう。古くは貿易港として有名だったシアトルは現在、MicrosoftやAmazon.comに代表されるハイテク産業の集積地として生まれ変わりつつある。ストックオプションでドットコム・ミリオネアになった若者達が、次々と新しい会社を立ち上げたり、新興企業に投資しているのだ。その中でも、インターネットを使って車載用電子システム「テレマティクス」の開発を行っているInfoMoveは、ユニークなサービスで日本進出を狙っている。
●マップから近所のレストラン情報まで
テレマティクスとは、ナビゲーション情報、盗難防止システム、走行中に故障した際のエンジン診断や修理工場への連絡などの機能を提供する車載用電子システムのことだ。現在、General Motorsの「OnStar」やMercedes-Benzの「TeleAid」などがテレマティクスとして有名だが、これらのほとんどはオペレーターに携帯電話で問い合わせる方式なので人件費などのコストがかかる。InfoMoveは、全方位測位システム(GPS)とワイヤレスインターネットを組み合わせ、マップやナビ情報、渋滞情報などすべてのコンテンツを同社のデータセンターから自動配信することで、低コストでのサービスを可能にした。これらのコンテンツは、たとえばニュースや株価情報、天気情報、近所のレストランやホテル情報はInfoSpace、走行中に故障した際のエンジン診断や修理工場への連絡先などはALLDATA、リアルタイムの渋滞情報はEtakといった具合に、すべて提携パートナー企業からライセンスしている。同社は来年、ASP(アプリケーション・サービス・プロバイダ)として、この技術システムを自動車会社やデバイスメーカーに貸し出す予定だ。
●通勤途中でモバイルコマース
InfoMoveを使えば、車の中でいろんなことができる。たとえば、朝の通勤で車に乗り込むと、カーナビがいつもの道順を示してくれる。運転の途中で、ボイスポータルに頼んで、電子メールや『ニューヨークタイムズ』紙の社説を読み上げてもらい、途中で事故のために交通渋滞に巻き込まれそうになった場合には、自動的に異なる道順を示してもらう。
また、複数のユーザーが仕事やプライベートでどこかに行く場合、お互いがどこにいるのかをマップ上で示してくれる「ジオメトリックス」サービスも提供している。インスタントメッセンジャーのように、互いに会話することもでき、誰かに自分の居場所を追跡されたくない場合には機能をオフにすることもできる。
さらに、ユーザーのいる場所と時間に合わせて効果的な広告メッセージを送る「モバイルコマース(M-Commerce)」も提供できる。たとえば、オフィスに出勤する途中、カーナビのスクリーンにスターバックスコーヒーのサインが出てきて「おはようございます。煎れたてのコーヒーはいかがですか?私達のお店に寄っていただければ、ラテを割引します」というアナウンスが流れる。ユーザーはその店に行き、デジタルクーポンなどを使って割引サービスを利用することができるという具合だ。
●サービス開始はまず日本で
InfoMoveでは、来年初めにベータバージョン、来年の第2四半期に正式バージョンを公開する予定である。NTT-ME、三井コムテックなどの日系企業からも投資を受けている同社は、サービスの開始は、米国に比べてワイヤレスネットワーク技術が進んでいる日本から行うとしている。しかし、『WIRED』誌によると、クルマ社会の米国では、人々が自動車の中で過ごす時間は1週間で平均5億時間にのぼり、通勤のために自動車を運転する時間は1人当たり1日88分という調査も出ており、米国市場も巨大である。コンサルティング会社のStrategis Groupによると、テレマティクス市場は1999年の4,000万ドル市場から2004年には17億ドル市場に拡大し、ユーザー数では82万人から1,100万人へと飛躍的に伸びると見込まれている。 同社はまた、将来的には、歩道や飛行機内など自動車以外のすべての場所で、いつでもどこでもテレマティクスを使用できるサービスを目指すと意気込みを見せている。(2000年10月)
写真1:InfoMoveのオフィス入り口:Microsoftから車で約10分のところにある
写真2:Peter Holland社長兼CEO:「私はシアトルで生まれ、シアトルで育ったシアトルっ子だ」と語る。ワシントン大学で経済学を専攻、McCaw Cellularに就職して以来ワイヤレス業界でキャリアを積む。
写真3:モバイルコマースの例:カシオのPocketPCのスクリーンに表れるスターバックスコーヒーのサイン