September 02, 2001

HIP HOP POETRY

[ Jazz ]

 ヒップホップ・ポエトリーにはまって1年以上立つが、最近のシーンの盛り上がりには目を見張るものがある。そのなかでもとくにニューヨリカン・ポエツ・カフェは、ニューヨークのポエトリー・シーンを支えるもっとも熱気にあふれた場所だ。

 8月2日の土曜日、ファリード・アブドラが、ニューヨリカン・ポエツ・カフェに戻ってきた。彼がホストを務めるヒップホップ・ポエトリー・ショーケース「リリック」が再開したのだ。ポエトリー・ショーケースは、大抵アポロ・シアターのアマチュア・ナイトのように、パフォーマーに対して観客が点数をつけて優勝者を決める。パフォーマーにはポエトが多いが、コメディアンやR&Bシンガー、またミュージシャンやダンサーなどもよく登場する。

 1年振りのショーとなったのは、前回のショーが警察沙汰になったからだ。毎月開催していた「リリック」はある晩、多数の人で埋まった会場内で数人の若者が喧嘩を始め、警察によりパフォーマンスを中止させられた。

 久々の「リリック」では、ンゴマとグッドフェラの2人が注目を集めた。ジャズ・ポエトのンゴマは、ハーレムの123丁目にあるカフェでのポエトリー・リーディング「ストリクトリー・ルーツ」のホストを務めている。ラスト・ポエッツを彷彿とさせる鋭い言葉で様々な事象をバッサリ切っていく彼は「アップタウンに住んでいるのに、いつもわざわざダウンタウンにまで降りて来る必要はない。ハーレムでポエトリー・シーンを興したい」と語った。グッドフェラは若いヒスパニックで、コメディっぽいラッピンとクールなダンスを披露してくれた。

 そのほかにニューヨリカンでは、毎週水曜日に「スラム・オープン」、金曜日にはキース・ローチによる「ポエトリー・スラム」が開催されている。また、毎月第1水曜日にはバイブ・マガジンなどの雑誌ライターでもあるバビト・ザ・バーバーが2年以上も続けている「オール・ザット」が開催されている。

 私を詩の世界に導いてくれたポエトのマーク・ボナムも、8月25日に初のポエトリー・ショーケース「グリーン・オニオン」を開催した。マヤ・アンジェロ、ギル・スコット・ヘロン、アンジェラ・デイビスなどのポスターを壁一面に貼り、アフリカン・アートをスライドで上映しながら行った彼のショーは、ポジティブ・バイブに満ち溢れていた。黒人文化だけではなく、すべてのピープル・オブ・カラーの文化を結びつけるために、自分のショーを「アフロ・アジアティック」と称している彼は、イタリアンとハイチ人とアメリカ先住民の混じった血を受け継いでいる。多くの黒人の詩が直接的な政治批判や社会批判を行っているのに対し、彼の詩は異なる文化のなかで共通項となる人間の根源を詩を通して追求し、日常の風景を哲学に昇華して提示する。

 また、ヒップホップ系ではかなり名の知れたグレゴリー・ゲイツもアップタウンのレストラン、モ・ベターでショーケースを行っている。勝者はアポロシアターのアマチュア・ナイトへ出場できるので人気だが、先日数人が喧嘩を始めてテーブルをひっくり返した。それから広いスペースを借りれなくなり、現在はプール・バーの狭いスペースでしかショーを行えない状況になっている。モ・ベターのバトルでは、ボナムの詠んだ哲学的な詩に対して、幼稚な恋愛の詩を詠んだ女性の方に皆拍手を送った。

 私が初めてポエトリー・ショーケースに足を運んだ1年前から比べると、ポエトリー・シーンはかなり盛り上がってきた。ニューヨーク・タイムズ紙なども数回ポエトリーを取り上げ、ヒップホップ・ポエトのボブ・ホーメンは「ラップ・ミーツ・ポエトリー」というCDも出している。また、最近「eargasms」というポエトリーのコンピ版CDも発売され、ヒップホップ・ポエトのジェシカ・ケア・ムーアも詩集「The Words Don't Fit In My Mind」を出版した。

 黒人コミュニティにおけるポエトリーは、商業ラップの失ったプログレッシブさを持ち、ヒップホップ・フィーリングを兼ね備えた新たな若者達の表現手段としての地位を確立した。ブルックリンのムーン・カフェや、サウス・ブロンクスのポインツ、またハーレムの「ストリクトリー・ルーツ」など、コミュニティを基盤にしたポエトリー・シーンが今後もっと登場していくことだろう。 (97/10/01)

Posted by hiroko at September 2, 2001 04:30 AM
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