音楽業界はデジタル配信の方向へ
文:長野弘子
インターネット業界と音楽業界を結びつける会議「Plug.in」が、ニューヨークで7月15-16日に開催された。市場調査会社のJupiter Communications主催による同会議では、N2KやSonicNet、またLiquid Audioやa2b musicなどの各社がブース展示やパネルディスカッションを行い、デジタル配信を含むさまざまなインターネット新技術を紹介した。
オンライン販売をめぐる激しい議論
初日に行われたオンライン販売に関するパネルディスカッションでは、CDNOWやN2K、またPolygramを代表するパネラにより激しい議論が繰り広げられた。CDNOWのJason Olim社長はニッチ市場向けコンテンツの重要性を強調し、N2KのLarry Rosen会長兼CEOは「オンライン販売企業がレコード会社と同様の役割を果たすだろう」と語った。最終的に、オンライン販売はコンテンツとコマースが合体した一体型コミュニティを創出し、音楽業界全体を変えることになるという点で全員意見が一致した。
ストリーミングメディアの将来
また、RealNetworksのRobert Glaser会長兼CEOによる基調講演では、ストリーミングメディアに関する展望が語られた。同氏は、グローバルでカスタマイズ可能、またチャンネルキャパシティが無限大にあるインターネットは非常に強力なツールであり、デジタル配信は音楽業界の必然的な流れであると語った。これを実現するためには高帯域、暗号化、電子透かし技術、パーソナル使用とIP権利のバランスの確立が必要であり、ブロードキャストの質と信頼性を高めるコンテンツ配信モデルの新たな標準策定が急務であると主張した。
優れたLiquid Audioシステム
会場でとくに人気のあったブースは、CDの製造および流通コストを大幅に削減し、ユーザーの選択肢を大幅に広げるデジタル配信技術を開発しているLiquid Audioだった。同社のマスター/エンコーディングツール「Liquifier」は、音楽データを暗号化し認証ユーザーしか音楽を聴くことができないようにし、電子透かし技術により音源をたどることを可能にするシステムである。
音楽業界は転換期のまっただ中
Jupiterでは120億ドル市場といわれる音楽市場のうち、5年以内に3000万ドルがデジタル配信になると予測しており、技術面や知的所有権の問題が解決されれば同数字はさらに高くなることが見込まれている。音楽業界の流れはデジタル配信へと進んでいるものの、標準策定や帯域幅などの問題により、デジタル配信の一般普及にはまだ時間がかかるだろう。音楽業界は現在、大幅な流通パラダイムの移行期に差しかかっている。(98/7/17)