文:長野弘子
現在、著しい進化を遂げているデジタルカメラだが、 日本のカメラメーカーを中心としたデジタルカメラの開発に対抗するかのように、最近パソコン側から統一企画案が出された。デジタルカメラをパソコンの周辺機器か、それともカメラの進化として捉えるかという問題は、パソコン界を牛耳るアメリカと、世界のカメラ市場のシェアを80%占めている日本との規格競争の問題とも捉えられる。 今回提案されたインテルの「Portable PC Camera '98 Design Guideline」は、誰でも簡単に簡単に画像操作ができ、かつ低コストなPentium IIベース・パソコンに対応したデジタルカメラを容易に開発できるというものだ。同ガイドラインは、静止画の撮影から処理加工、保存、共有、およびパソコンとの接続にいたるまでのカメラの設計要綱が包括的にまとめられている。今回、ヒューレット・パッカード、イーストマン・コダック、マイクロソフトなどを始めとする20数社が支持を表明している同ガイドラインの全貌を探る。
Intel Portable PC Camera '98 Design Guideline
デジタルカメラの普及が進むにしたがって、パソコンとの接続方法やファイル形式、各種ドライバの設定の相違により、ユーザが撮影した画像データをパソコンへ取り込んだり加工する作業が簡単にできないといった問題が急増している。インテルは、プラットフォームの条件、接続性および相互運用性などの仕様の統一規格を提案することで、パソコンとデジタルカメラの接続性を保ち、こうした問題を解決することを図っている。
現在、パソコン上での静止画の利用は急速に普及しており、将来的には、家庭およびビジネス市場で現在の電子メールと同程度の普及率を達成するものと予想されている。それと同時に、MMXテクノロジを搭載したPentiumプロセッサやPentiumIIプロセッサ・ベースの高性能なプラットフォームも浸透しつつあり、これらのプラットフォームとデジタルカメラとの接続性は急務とされている。インテルでは、こうした次世代コンピューティングの世界の到来に備えて、同ガイドラインに準拠することで、デジタルカメラと高性能パソコンの統合を速やかに実現しリアルタイムでのインタラクティブな静止画の利用を可能にするとしている。
規格内容
同ガイドラインには、デジタルカメラの設計に関する規定、画像ファイルフォーマットの規定、記憶メディアの規定に加え、デジタルカメラがパソコン上で優れた動作性能を提供するためのパソコンの規定やパソコンへの接続方法の規定が含まれている。
まず、デジタルカメラの設計に関する規定には、768×576ピクセルの画像解像度、屋内/屋外の撮影、1670万色のカラー表示画像(24ビット) 、フラッシュ撮影時に撮影終了後10秒以内に次の撮影ができること、消費電力、バッテリ寿命などがあげられる。
次に、画像ファイルフォーマットの規定には、インターネットや各種のアプリケーション間で画像データを交換する際に、画質の劣化を防ぐFlashPixファイル形式を使用することがあげられる。同ファイル形式は、ライブピクチャー、ヒューレット・パッカード、イーストマン・コダック、マイクロソフトの4社により共同開発され、次世代の標準グラフィック・フォーマットとして有力視されている。
また、記憶メディアの規定には、フラッシュEEPROMを搭載したメモリ・カードを使用することがあげられる。フラッシュメモリ・カードは、高い信頼性があり、低価格でしかも着脱および再利用が可能な電子フィルムであり、インテルからも同カード「Flash Memory MiniatureCard」が発表されている。
さらに、パソコンの規定には、MMX対応PentiumもしくはPentium IIのプラットフォームを使用することがあげられる。これにより、パソコンでの画像データの処理および加工を高速化できるとインテルでは説明している。パソコンへの接続方法の規定には、ユニバーサル・シリアル・バス(USB)ポートに準拠することがあげられる。これにより、パソコンとデジタルカメラの間で各種機能を自動認識、自動設定し、接続するだけでデジタルカメラが利用できるようになる。なお、オプションで IEEE 1394対応もある。
DIGの結成
Digital Imaging Group(DIG)は、おもにオンラインDEPを対象に、さまざまなベンダーの製品間の伝達をより高度にし、オンライン上での画像のやり取りを容易にする仕様を策定する目的で設立された。このフォーラムにはアドビシステムズ、キヤノン、イーストマン・コダック、富士写真フイルム、ヒューレット・パッカード、 IBM、インテル、ライブピクチャー、マイクロソフトなど、コンピュータとイメージング分野の有力ベンダー9社が参加している。
DIGでは、既存のフィルムやデジタル技術を活用できる将来の画像プラットフォームを、次世代ファイル・フォーマットの「FlashPix」や「Internet Imaging Protocol(IIP)」へ組み込むことを計画している。IIPとは、インターネットでの画像転送を高速に行うマルチベンダー・クロス・プラットホーム対応のクライアント/サーバ・プロトコル。将来の接続技術と呼ばれるFlashPixとIIPは、現在、各種の画像ツールやオンラインサービスで使用され、将来の写真画質の3Dアプリケーションの標準になると予想されている。
インテルのPC GuidelineもまたFlashPixをサポートしており、DIG設立により、パソコンメーカー側とカメラおよびフィルムメーカー側との歩み寄りの姿勢が一層明らかになってきたといえる。参加企業の富士写真フイルムも、従来のデジタルカメラ用ファイルフォーマットのExifからFlashPixをサポートする方向に転換しつつあるなど、業界を越えた規格統一の動きが起こりつつある。
今後の展開
インテルでは、ガイドラインに準拠したデジタルカメラの開発を簡単に行うための制作キット「Intel 971 PC Camera Kit」を発売している。まず、画像取り込みには一般的なCCDではなく、インテルが開発した低コストなCMOSセンサを使っていることが大きな特徴だ。また、同キットには、CMOSセンサとDRAMメモリ、カメラI/O回路とのインターフェイスである画像処理ユニット、FlashPixファイル形式への変換もできるPC画像処理ソフトウエアなども含まれている。
これを利用したデジタルカメラは、画像解像度、カラー表示などがガイドラインに準拠しているうえ、PCから切り離してデジタルカメラとしても利用でき、また、USB経由でPCに接続してデジタルビデオカメラとしても利用できる。さらに、マイクロソフト社の「PictureIt!」などの画像ソフトウエアにも対応している。
これにより、弱小メーカーでもデジタルカメラの制作が可能になり、今後続々と低価格なインテルのキットを使った製品が出てくるものと思われる。インテルでは、今後のコンピュータの流れともなるビジュアル・コンピューティングの世界で小さな企業による大企業同様のビジネス展開を可能にし、効率的にビジネスチャンスを創出することを目指している。実際に、Aztech Systems社、Lite-On Technology社および Samsung AerospaceIndustries社の3社が同キットを使用したデジタルカメラの製造を現在計画している。
現在、日本では、デジタルカメラの記憶メディアに「スマートメディア」、ファイルフォーマットに「Exifフォーマット」を主に使用しているが、インテルのガイドラインやDIGの結成によりこの流れが大きく変わるものと見られている。今後は、インテルの推奨する同社製品の「MiniatureCard」、またファイルフォーマットに FlashPixを使用した製品が日本でも増加すると予想される。
また、オンラインDEP分野でも、DIGでFlashPixとIIPをサポートすることにより、 FlashPixが同分野の標準フォーマットになることはほぼ確実だといえる。DIGには日本の富士フイルムやキヤノンなども名を連ねており、将来的には日本のオンライン DEPもFlashPixを標準フォーマットとして採用する方向にある。今後、ますます規格統一が進むビジュアル・コンピューティングの世界だが、これらの日本企業の対応が、パソコン界を牛耳るアメリカと、カメラ界を牛耳る日本との規格競争の勝利の鍵を握ることになりそうだ。(1998年2月号)
Posted by hiroko at September 21, 2001 01:16 PM | TrackBack