文:長野弘子
インターネット人口の増加にしたがいWebの遅さに苛立つ人口も増加しているが、その元凶となっているのが巨大なデータ量を必要とする画像ファイルだ。現在、その Web画像フォーマットが大きく変貌を遂げつつあり、GIFに代わる次世代画像フォーマットといわれるPNG(Portable Network Graphics、発音:ピング)が注目を集めている。GIFの抱える法的問題が直接的な契機となって生まれたPNGは、圧縮技術やインターレース表示などでGIFより優れており、最終的にはGIFに代わるフォーマットとして定着すると予想されている。
複数画像のサポートを除いてGIFの特徴をすべて兼ね備え、しかも1つのビットマップ画像を劣化しないように保存するとされるPNGフォーマットは、具体的にどの程度 GIFより優れているのだろうか。また、PNGは将来的にWebブラウザのプラグインとして採用され、業界スタンダートとしての地位を確立することができるのだろうか。 PNG技術の比較解析および今後の展開を検証する。
GIFが使えなくなる?
現在幅広く普及しているGIFフォーマットに代わる画像フォーマットとして設計されたPNGの歴史は、GIF圧縮技術の生まれた1977年前後へとさかのぼる。1977年、 Jacob Ziv、Abraham Lempelという2人のイスラエル人研究者が、新しいデータ圧縮アルゴリズム「LZ77」および「LZ78」を発表した。その数年後の1983年、のちに Burroughsと合併してユニシスとなるSperryのTerry Welchが「LZ78」を応用した高速圧縮アルゴリズム「LZW」を開発し、1985年に同技術の特許を取得している。その後、コンプサーブのBob Berryが1987年に、この圧縮方法を使用してGIF(Graphics Interchange Format)を開発している。
当初、ユニシスはLZWアルゴリズムをオープン規格とし、LZW使用に関するロイヤルティを一切求めなかった。しかし、財政難に陥った同社は1994年末、ロイヤルティを請求する方策に踏み切った。GIFはそれ以前にもフォーマット上の不備な点がいくつか指摘されていたが、この法的問題が直接的な契機となり、より優れた新しい代替フォーマットを開発する非公式のインターネット団体が結成された。同団体にはコンプサーブやW3Cなどで働く研究者なども多数参加しており、1995年1月4日、同団体主催者のThomas Boutellが新フォーマット「PBF」を発表した。この改良バージョンが、現在のPNGである。
PNGの特徴
1.圧縮
圧縮アルゴリズムは、一般的なファイル圧縮ユーティリティのPKzipを採用しているのでライセンスフリー。また、PKzipで使用されているLZ77圧縮アルゴリズムで圧縮されたzlibフォーマットは、圧縮率がGIFより10−30%大きいうえに画像の劣化がない。LZ77方式は、LZWアルゴリズムと同様の機能を持っている。さらに、圧縮を強化するため、圧縮する前に画像にフィルタをかけることができる。
2.色数
RGB、インデックスカラー、グレースケールをサポートしている。RGBの場合、1ピクセルあたり16bit、合計48bitまでの色数をサポートする。 グレースケールでは最高16bit、またインデックスカラーの場合、GIFと同様の8bitまでのパレットをサポートする。
3.透過
画像の透過モード指定には、1色マスキングとアルファチャンネルという2種の方式を用いることができる。1色マスキングはGIFと同様に透過色を指定するやり方で、もう1つは画像データにアルファチャンネル加える方法。アルファチャンネルを使用すれば、完全透明(0)から完全表示(255)まで画像の各ピクセルごとに透過度が指定でき、1ピクセルあたり64KBの透明度管理が可能となる。これにより1つの画像に複数の透明度の画像を持たせることができ、美しいグローシャドーやドロップシャドーなどの表現も可能になる。
4.ガンマ補正
複数のプラットフォームのためにガンマ補正のパラメーターを画像に持たせられる。ガンマ値が小さくなると画像は全体的にコントラストの低い明るい画像に、 ガンマ値が大きくなるとコントラストの高い暗めの画像になる。モニタのガンマ値は Macintosh機では1.8に、Windows機では2.2に設定されることが多いので、Macintosh用の画像をWindows機でみるとコントラストの高い暗めの画像になる。こうした場合、モニタのガンマ値を1.2の逆数である0.83に調整することで、基本的な色調の補正が可能となる。
5.表示の仕方
インターレース表示ができる。その方式は、インターレースGIFよりも格段に早く人間の目に認識される画像を表示する7パス・インターレース機構(Adam7方式)を採用している。インターレースGIFでは、画像を認識するまでに50%の読み込みを必要とするが、PNGでは20-30%の受信時点で画像を認識できる。
6.テキスト 付随データとして、画像にテキストデータを組み込むことができる。画像タイトル、作者、説明、著作権、制作日、制作時間、制作ソフトウエアなどの規定されたキーワード以外にも、任意のキーワードを使用して独自のテキストを含めることもできる。 7.アニメーション
現在は単一画像のフォーマットとしてのみ規定されており、基本的に複数画像のサポートはしない。しかし、拡張性のある柔軟なフォーマットなので、アプリケーションのサポート次第で複数の画像を含める拡張も可能。これにより、アニメーション GIFと同様の機能が実現できる。
8bitパレット対決(GIF対PNG)
24bit対決(JPEG、PNG)
48bit対決(TIFF、PNG)
PNGの現状と今後の戦略
今後の次世代Web画像フォーマットとして期待されているPNGは、水平パターンのみではなく、GIFにはない垂直パターンのためのフィルタリングも行い、色選択、色数削減、ヒストグラム調整により濃淡の少ない画像で最高の機能を発揮する。また、 GIFと比べて圧縮率が著しく小さいうえ特許権に抵触しないことから、GIFに代わる標準となるのは今後数年以内だと考えられている。
一方、圧縮率の高い劣化型の画像フォーマットであるJPEGに対しては、現在PNGの全体設計と技術をもとにしたフォーマットであるPNP(Portable Network Photograph、発音:ピンナップ)の開発が進められている。PNPは、JPEGに代わる標準となることが予想されている。
今後広く求められるWeb画像フォーマットの特徴としては、画質の低下なしに画像をいかに小さなファイルに収められるか、また、いかに迅速に画像のロードができ、歪みのない効果的な画像を作成できるかという点が決め手となってくる。 こうした特徴を兼ね備えるPNG以外のフォーマットとしては、数学理論を応用したフラクタル画像圧縮のFIF (Fractal Image Format) 、またEastman Kodak、HP、Live Picture、Microsoftが共同開発したFlashPixなどがあげられる。
ピクセルを使用せず数学的に画像を符号化するFIFは、解像度に依存しないため高画質を維持しながら高レベルの圧縮を可能にし、ビットマップ・タイプと比較して 100倍近い縮小が可能になるといわれている。現在発売されているWeb対応のフラクタル製品は、Iterated Systemsからの製品のみとなっている。
また、万能型ファイル・フォーマットのFlashPixも注目を集める新しい画像フォーマットだ。これは、複数の画像管理や解像度調整をサポートするもので、キャリブレートRGBとPhoto YCCをサポートしている。
こうした開発中の新しい画像フォーマットが、Webの世界で画像革命を引き起こしつつある。今後数年以内には、これらのいずれかが特許問題のあるGIFや旧型画像フォーマットのJPEGにとって代わることになるのは確実だろう。PNGに関しては、今年中にはNavigatorやExplorerでもサポートされると予想されているが、将来的にはブラウザに組み込まれ、Webの画像フォーマット標準となる可能性が高い。(1998年1月号)
Posted by hiroko at September 21, 2001 01:19 PM | TrackBack