September 21, 2001

なぜ「Digital WaterMark」なのか?

文:長野弘子

デジタル画像とともに増え続ける著作権侵害 デジタル時代に突入しつつある現在、インターネットやCD-ROMで使用されているデジタル画像に対する著作権侵害が頻発している。マルチメディア、電子出版、また電子商取引などの爆発的増加にともない、増え続ける著作権の侵害に対して著作権所有者は頭を抱えている。なんとか画像の不正コピー防止対策を確立しなければ、今後のビジネスモデルに深刻な被害が出ることは明らかだ。不正コピーを防止すると同時に、不正コピーした画像を使用しているウェブサイトや雑誌を見つけだす方法はないのだろうか。

1.WaterMarkとは何か?

 こうした著作権侵害を防止する方法として、これまで暗号化やスクランブル技術といったものが利用されてきた。これは暗号鍵を持った人だけが画像を見ることができるというシステムで、課金システムとしては非常に優れている。しかし、暗号鍵を持った人が画像にアクセスし、それを不正コピーしてしまえば、その画像の著作権侵害はいとも簡単に行われてしまう。

 これに対して、著作権侵害を防止する効果的な方法として、現在の最有力候補にあげられているのが電子透かし技術だ。電子透かし技術とは、画質を落とすことなく画像のなかに著作権者のID情報を埋め込む技術で、これにより画像の著作権が明確になる。しかも、このID情報はどこに書かれているか分からないうえ、ID情報を取り去りにくい。たとえば、ID情報の埋め込まれた画像をウェブサイトから印刷して、それを再びスキャンしてもID情報がちゃんと残っているという仕組みになっている。

 また、暗号化やスクランブル技術と異なって、電子透かし技術が優れている点は、暗号鍵を持っていない人でも自由に画像を見れるということだ。それでいて、画像を不正コピーすることが非常に困難になる。なぜなら、もし埋め込んだID情報を無理矢理取り去ろうとすると、画質が劣化してその画像は使い物にならなくなってしまうからだ。また、自分のIDが付いている画像をウェブ上から自動的に探し出せるので、不正使用されている画像の発見がより容易くなり、不正コピーを抑えることができる。さらに、これとは逆にID情報を画像から検出するソフトウェアを使用して、気に入った画像の著作権所有者が誰かを調べることもできるのだ。


何が出来るのか?

 電子透かし技術を使用することの最大利点は、著作権所有者にとって一番重要な不正コピー防止を徹底させることができるという点にある。 また、検出ソフトウェアを使用すれば画像を見ている誰もが画像に埋め込まれたID情報から著作権所有者の名称や連絡先などの著作権情報を知ることができるので、著作権所有者にとっては自分の作品を宣伝する機会が増大することにもなる。たとえば、電子透かし技術を利用して写真を公開しているカメラマンに対して、出版社がその写真からカメラマンの情報を入手して連絡を取ることも可能。 具体的には、写真データベースの所有会社やカメラマンは料金を支払って、それと引き換えに6桁の数字からなる著作権所有者のID番号を得る。一方、ID情報を検出するソフトウェアは、誰でもID情報を検出できるよう無料で入手できる。これにより、ユーザーは写真に埋め込んであるID番号を検出し、ID番号に対応した著作権所有者を探し出すことができる。この方法を使用すれば、気に入った画像の著作権所有者を即座に見つけだし、画像の使用契約を結ぶこともできる。

2.著作権管理サービスのしくみ

著作権管理サービスとは

 電子透かし技術企業各社は、同技術を簡単に利用できるように包括的な著作権管理サービスを提供している。著作権管理サービスは、ID情報を画像に埋め込むソフトウェア、ID情報を画像から検出するソフトウェア、ID情報を管理するデータベースの 3つの組み合わせで成り立っている。

 著作権所有者は、これら管理サービスに登録しソフトウェアを入手することにより、著作権管理サービスの提供を受けることができる。大抵、ID情報を画像から検出するソフトウェアは無料で入手できるが、ID情報を画像に埋め込むソフトウェアは有料となる。ただし、Digimarc社の検出/埋め込みソフトウェア「PictureMarc」などは AdobePhotoShop4.0に標準搭載されている。また、ID情報管理データベースへの登録は、年間平均100-150ドルほどかかる。これにより登録者の情報は、検出ソフトウェアで検出した画像IDを用いてデータベース・アクセスを行ったユーザーに伝えられる。


各社サービスの違い

 電子透かし技術の著作権管理サービスは、各社により若干異なる。アメリカでは現在35種類ほどあると言われている電子透かし技術だが、その代表的な会社は Digimarc、HighWater、NEC Research Institute、またFraunhofer CRCG社の4社となる。各社の電子透かし技術や同サービスの違いは一体どういったものなのだろう。


DigimarcとHighWater社

 両社のサービスは基本的に、検出用のソフトウェアを持っていれば誰でもID情報を検出し著作権情報を得ることができるというものだ。 まず、HighWater社は、著作権所有者のID番号と画像データのID番号という2つのID番号を使用する。この2つのID番号管理により、著作権所有者は使用する出版社によって異なるIDを渡すことができる。このシステムを使えば、不正コピーを見つけたときにどの出版社に与えた権利かを調べることで、流通経路を割り出すことができるのだ。

 一方、Digimarc社も同様に、著作権所有者のID番号と画像データのID番号という2つのID番号を使用し、HighWater社と同等のサービスを提供している。さらに同社では、ID番号が入った画像をウェブサイトのなかから検索し、著作権所有者に知らせるエージェント「MarcSpider」を提供している。これにより、著作権所有者は自分の画像がどこで使用されているかを容易にチェックできるようになる。しかし現在のところ、不正コピーのみを自動的に検索するエージェントは開発されていない。

 また、Digimarc社は誰でも著作権所有者の情報を自由に得られるような「著作権通信」を実現するため、著作権所有者のID番号を誰にでも知らせることができるといったシステムを採用している。しかし、将来的には鍵データを持ったユーザのみがID番号を検出するシステムも導入する予定。


NEC Research InstituteとFraunhofer CRCG社

 これに対してNECとCRCG社では、インターネットでの画像データの売買を重視したシステムを構築している。まず、DigimarcやHighWater社のように2つのID番号を使うシステムでは、使用した出版社によって違うIDを渡すことにより、見比べればどこに IDを埋め込んだのかが分かってしまう可能性があるという大きな問題がある。このため、NECとCRCG社では鍵データを使用する。具体的には、ID番号を検出するための鍵データを使って、鍵ユーザだけがID番号を検出できるように制限を加えるようにしたもの。

 CRCG社では、画像データのID番号、著作権所有者の情報のID番号、また画像を使用している出版社のID番号という3つのID情報を利用している。このうち画像データの ID番号は、WWWブラウザで画像を表示すると、画像データの下部に自動的に表示される。一方、著作権所有者の情報のID番号、画像を使用している出版社のID番号は、著作権所有者だけしか読み出せないようになっている。これにより、一般ユーザは画像データのID番号にしかアクセスできないので、どこにIDを埋め込んだのかが判別される可能性は低くなる。


各社の動向

●米Digimarc Corp.(http://www.digimarc.com)ソフトウェア「PictureMarc」を開発
AdobePhotoShop4.0では、PictureMarc Plug-inが標準搭載
Micrografx Graphics Suite 2.0、Webtricity 1.0 にも標準搭載
Corel Paint 7.0、Corel Draw 7.0にも標準搭載
WordPerfect、Office Pro 8.0にも標準搭載予定

●英HighWaterSignum Ltd.(http://www.highwaterfbi.com)ソフトウェア「FBI Pro」を開発
AdobePhotoShopプラグイン「FBI Pro」は、395ドルで1万件のコード作成可能。
スタンドアロン「FBI Pro」は1795ドルで5万件のコード作成可能。
英国通信事業者のBT社、英国放送事業者のBBC社がインターネットのホームページなどで使用中。
また、ビルゲイツが設立した美術品のデジタル化を行う会社Corbis社も、美術品データの著作権保護に、この電子透かし技術を使う模様

●米Fraunhofer CRCG(Center for Research Computer Graphics) Inc. (http://www.crcg.com)
ソフトウェア「SysCoP」を開発
AdobePhotoShop、Navigatorに「SysCoP」プラグイン搭載予定

●米NEC Research Institute, Inc.(http://www.neci.nj.nec.com/)ソフトウェア「TigerMark Image DataBlade」を開発
Informix Universal Serverに標準搭載

どうやってIDを埋め込んでるのか?PhotoShop4.0で使ってみる。

Digimarc社の著作権管理サービスへの登録

 では、実際にDigimarc社の著作権管理サービスへの登録を行ってみよう。同社ホームページに行き、「Obtain Your Own Creator ID」をクリックする。ここで、年間料金99ドルか無料トライアルのどちらかを選択できる。無料トライアルを選択すると、次のページでは Photoshopィ 4.0のユーザーかMicrografx Graphics Suiteェ 2.0、 Webtricityェ 1.0 のユーザーかを選択する。ここでPhotoshopィ 4.0を選択すると、登録に関しての注意書きのページに行くので、「I accept」をクリックするとID登録画面に行く。必要事項をすべて書き込みクリックすると、登録完了画面に行き着く。

ID情報を埋め込む

 では、実際にID情報を埋め込んでみよう。Photoshopィ 4.0で編集した画像を開き、ファインダーの「Filter」にあるDigimarcに行き「Embed Watermark」を選ぶ。すると、「Embed Watermark」用のウィンドウが開く。ここでは、電子透かしの耐久度も選択できる。もし耐久性を重視したければ4段階の4を選べばよいが、その分ID情報が見つかりやすくなるという欠点もある。「OK」をクリックすれば画像に自動的に ID情報が埋め込まれる。ID情報を埋め込んだ後の画像は、埋め込み前の画像とは見たところまったく変化がない。


ID情報を取り出す

 次に、ID情報を取り出してみよう。ID情報が埋め込まれた画像は、レタッチ、圧縮、または印刷されたあとでもそのID情報が消えることはない。 さきほどのID情報を埋め込んだ後の画像を開き、ファインダーの「Filter」にある Digimarcに行き「Read Watermark」を選ぶ。すると「透かしの情報」というウィンドウが開いて、画像ID、また著作権所有者の住所や電話番号などの情報が含まれた同社サイトのURLアドレスが表示される。もし画像にID情報が埋め込まれていない場合には「透かしは使用されていません」というウィンドウが現れる。


Digimarc社へ著作権情報を問い合わせる

 先ほどの「透かしの情報」ウィンドウに表示されている画像IDを控えておけば、同社サイトの画像IDによる検索サイトから著作権所有者の情報にアクセスできる。また、このサイトには「General Search」の項目もあり、企業名や名前から著作権所有者の情報を割り出すこともできるのだ。

 また、自分の画像がどのウェブサイトに使用されているかを検索して知らせてくれる「MarcSpider」エージェントも利用できる。Digimarc社の「MarcCentre」メンバー・サイトに行き、画像IDとパスワードを入力すれば、MarcSpiderサービス検索結果が得られる。ただし、このサービスは無料トライアルの場合は利用できない。(1997年12月号)

Posted by hiroko at September 21, 2001 01:21 PM | TrackBack
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