September 21, 2001

Industrial Light & Magicインタビュー

[ dpi ]

ILMの「Small Soldiers」製作担当、CG監督のErik Mattsonへのインタビュー

文/インタビュー:長野弘子

 George Lucasにより1975年に設立されたILM社は、「Star Wars」から始まり現在では100本を超える優れたビジュアルイフェクト映画の製作を担当している。とくに、フォトリアリスティックなデジタル画像技術、また自然現象をリアルに模倣するアニメーション化では業界随一の地位を確立している。ILMはアカデミー賞の最優秀ビジュアルイフェクト部門で14回、テクニカルアチーブメント部門で9回の受賞を達成しており、最近では人間の身体のリアルなゆがみの表現に成功した「The Mask」、完全コンピュータ制御のキャラクタを登場させた「The Abyss」や「Dragonheart」などで高い評価を受けている。

 ILMが手がけた最新作「Small Soldiers」では、さらなる映像への可能性を追求しており、主人公のひとりであるArcherはなんと「Jurracic Park」に出てくるティラノザウルスの62倍のデータ量を必要とした。dpiでは、同映画のCG監督を務めたErik Mattson氏にインタビューを試み、製作環境や現場の雰囲気、また業界全体の展望を語ってもらった。

 Mattson氏は、MITで航空工学と宇宙飛行工学を学んだ際、CGが技術データのプレゼンテーションに重要な役割を占めることに興味を抱いた。その後、Lockheed Martin社で推進エンジニア、NASAのジェット推進ラボでサイエンティフィック・ビジュアリゼーション・スペシャリストを歴任し、1994年に「Casper」の技術ディレクターとしてILMに入社した。同氏は「Dragonheart」や「Mars Attacks!」、「The Lost World: Jurracic Park」、「Amistad」、「Deep Impact」など多数の作品の技術ディレクターやCG監督を務めている。

【Erik Mattsonへのインタビュー】

Q:Small SoldiersではCG監督を担当なさっていますが、CG監督とは具体的にどんな仕事なのですか?

 CG監督とは、ビジュアルイフェクト監督が持つビジョンを実現するために、適切なソフトウエアやハードウエアを選択したり、それらががきちんと動作しているかどうかをチェックする仕事です。Small Soldiersでは80名のILMチームで製作を行いましたが、とくにビジュアルイフェクト監督との緊密な関係が要求されました。

Q:Small Soldiersの製作期間は?

 約6カ月です。これは通常の製作期間と同様、またはやや短いくらいですが、ひと昔前だったら同様の作業をこなすのに1年から1年半はかかっていました。製作期間の短縮には、マシンがどんどん速くなって性能がアップしていることが大きく貢献しており、この傾向は今後もずっと続くでしょう。

Q:ハードウエア製作環境は?

 すべての製作スタッフはSGIの「O2」を持っており、Windows NT、Amiga、Macなどの他のマシンは一切、使用していません。また、レンダリングサーバはSGIの「Power Challenges」と「New Origin 2000」を数台使用しています。これらのサーバは、すべての製作過程で使用されています。

Q:ソフトウエアは?

 大きく分けて3種類使用しています。まずAliasの主要モデリングツール、SoftImageの主要アニメーションツール、最後にILMが独自開発したレンダリングと合成ソフトウエアです。

メーキングについて:

Q:「Commando Elite」がケースを破って登場するシーン

 このシーンは、ILMが独自開発したソフトウエアを使用しています。名前は秘密。以前からあったソフトウエアですが、プラスチックのケースが破れるイメージを作ったことは今までありませんでした。その意味では新たな使用法を開発したといってもいいでしょう。もっとも難しかったところは、プラスチックのケースをどうやってリアルに見せるかという点です。観客は、プラスチックがどういうものかよく知っているから、少しでも偽物っぽいとすぐに見破られてしまいます。キャラクタアニメーションの部分はSoftImageを使用しましたが、現在我々は製作の大部分を独自開発ソフトを使用して行っています。

Q:ロボットの口の動き

 これは、Dragonheartの口の動きを製作したのと同じ独自開発ソフトを使用しました。Dragonheartではこのソフトウエアを非常によく使いました。

Q:目玉キャラクタ「Ocula」の動き

 これは、伝統的なツールを使ってワイヤフレームとアニメータを使用しました。

Q:本物の人形とCG人形のマッチオーバー

 これがSmall Soldiers製作にあたり一番苦心した点です。本物の人形を完全なコンピュータイメージにいかにシームレスに置き換えるかということが、この映画製作のもっとも重要なポイントでした。これを成功させるためには、マッチオーバーを始める前にまず行うべき重要なプロセスがありますが、それは我々のCGモデルを本物の人形とまったく同じ彩色とフォルムに造り上げることです。それができたら、実際の人形を設置して撮りたいシーンを撮影し、その後カメラ環境と証明はそのままで、デジタルカメラで人形を省いたプレートショットを撮影します。そこにCG人形をはめ込んでいくのですが、ここでとくに重要なことは、本物の人形からCGの人形へ移行したことを観客に気づかせないよう自然にCG人形をはめ込むことです。

Q:今回、136種類ものCGモデルを作ったそうですが、これはILM史上初という脅威的な数字ですね。

 はい、大変な仕事でした。たとえば、主人公のひとりである「Chip」が爆発するシーンが最後にありますが、このイメージを構築するには通常とはまったく別のCGモデルを作る必要がありました。Small Soldiersには13種類の異なるキャラクタが登場しますが、これらキャラクタのCGモデルバージョンは30種類になりました。また、ディテールに非常にこだわり、Archerの顔の表情、胸のバンドなど全体的にかなり気をつかいました。さらに、庭のスコップなど106種類の小物もCGモデルで製作しており、最後に登場する迫力あふれるヘリコプターも全部CGで作られています。

本人について:

Q:なぜ、ILMに入社しようと思ったのですか?

 そうですね、昔はエンジニアになりたかったのですが、私にとってエンジニアは十分にクリエイティブな分野ではなかったのです。80年代、テクノロジーと創造性の両方をかねあわせた、エンジニアよりももっとエキサイティングな仕事があるということに気づきました。それが、ビジュアルイフェクトだったのです。そこで、この分野で最高の会社で働きたいと思ったのです。

Q:ILMの社風はどうですか?

 いうまでもなくグレイト!自由に何でもやらせてもらっています。製作チームで動いているときは、朝から各人が何を担当するかを決定し、その後は自由です。重要なのは過程よりもいい結果を出すことであり、ただひとつの方法に執着すべきではありません。ILMは、あらゆることに挑戦できる環境が整っています。

Q:ライバル企業のDigital Domain(DD)との違いは?

 フォトリアリスティックなCG製作は我々のもっとも得意とする分野ですが、DDもこの分野で質の高い製作を行っていると思います。しかし、我々は業界でより長い歴史を持っている分経験も豊かだといえます。「Titanic」については観に行っていないので何ともいえませんが、私も製作に携わりました。

Q:個人的にはどんな映画を観ますか?  やはり、他社スタジオでどこまでやれるかが気になるので、それと我々がやっぱり進んでいることを確認するうえでも(笑)なるべく多くのビジュアルイフェクト映画を観るようにしています。ILMが製作を担当するようなファンタジー映画は個人的にも好きです。また、「レ・ミゼラブル」や「グッド・ウィル・ハンティング・旅立ち(Good Will Hunting)」的なドラマも好きです。ストーリー性がないビジュアルイフェクト映画については、観客がスペシャルイフェクトを求めており、トップ10の映画のうちの6本はスペシャルイフェクト映画という最近の風潮が強調されすぎているからだと思います。

Q:業界全体の動き、展望について訊かせて下さい。  ビジュアルイフェクト業界は急速に多様化しており、映画監督、脚本家、プロデューサらはDragonheartのドラコのような実在しない生物を求める一方で、フォトリアリスティックなCGも求めています。鍵は、かれらの頭の中のイメージをいかに素早く完璧に体現できるかであり、近い将来には「Toy Story」のように登場人物も背景もすべてデジタルで、製作の全工程をコンピュータの内部で行うような映画製作がトレンドになるのではないかと思います。

('98/7/20)

Posted by hiroko at September 21, 2001 01:29 PM | TrackBack
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