「オープン」性を求める傾向が顕著に
世界最大のコンピュータおよび消費者家電の展示会「Comdex/Fall '98」が、Las Vegasで11月16日から19日まで開催された。主催者側の発表では、今年の出展企業は2400社、来場客は約22万人となっているが、実際の数字はこれよりかなり少なかったとされている。企業間取引がインターネットで簡単に行なえるなどの状況の変化により、展示会への企業の出展傾向は毎年薄れている。今年はIBM、Compaq、Intelなどの大手が出展を控え、IBMは関係者だけを招いてホテルで懇談会を開き、Intelも個別にチュートリアルを開催した。
一方、展示会場でのもっとも大きなトレンドは、ハンドヘルドPC、PPC、インテリジェントペイジャーなどのモバイル製品だった。その他、ホームネットワーキング、バイオメトリクスや音声認識技術、安価なフラットパネル、Micorosoftの最大の脅威とされているLinuxに大きな注目が集まった。また、MicrosoftがSun MicrosystemsのJava訴訟に敗訴したことも、会期中の大きな話題となった。
●基調講演はただの「PR」に?

Comdex基調講演は、ただの「PR」になりつつある。今年も前夜祭の基調講演を務めたMicrosoftのBill Gates会長兼CEOは、ソフトウエア、ハードウエアの進化とともにPCがネットワークの中心として今後も重要な役割を担うと語った。しかし、会期中に発表された同社のリレーショナルデータベース「SQL Server 7.0」の説明にかなりの時間を費やし、ビジョンを語るというよりはPRの感が否めなかった。
さらに、初日の基調講演では、当初の予定にはなかったOracleのLarry Ellison会長が登場した。Microsoftを目の敵にする同氏は、SQL Server 7.0の処理速度の遅さを繰り返し批判、データベース市場でのOracleの絶対的な優位を改めて強調した。また、「Oracle8i」を中核とした新たなサーバパッケージ「Raw Iron」を発表した。これは特別なOSを含み、標準ハードウエアに対応しているため「現在持っているWintelマシンにインストールでき、Windows OSを不要にする」という。
一方、PRに走るこれらの基調講演の中で点数を稼いだのは、IntelのCraig R. Barrett社長兼CEOだった。「テクノロジー業界のタブー」に挑んだ同氏は、米人気番組「Politically Incorrect」をもじった「Technologycally Incorrect」ショーのパネリストとしてステージに登場した。ショーの途中で、議題がPC普及率の伸び悩みにおよぶと、Barrett氏は「PCの普及は、子供を持つ家庭に支えられている。我々は(年寄りの)君たちが死に絶えるのを待っているのだ」とジョークを放ち、会場を沸かせた。
●チップの埋め込まれたポスターが登場

展示会場でとくに注目を浴びた企業はXeroxだった。「印刷物とデジタルコンテンツの融合を図る」企業としての新たなイメージアップを図る同社は、今年がチャンスとばかりにフットボール場の約半分のフロアを展示に費やした。来年には約20もの新たなサービスを発表すると意気込む同社は、同社の研究開発センター、PARCラボで現在開発中の新技術「Smart Staple」を発表した。これは印刷物にチップもしくはコードを埋め込むことで、その印刷物に含まれた情報をハンドヘルドPCに直接ダウンロードできるというもの。これにより、たとえば街に貼られたコンサートのポスターを見て興味を持てば、自分のPalm IIIをポスターにかさずだけで、これらのコンサートの日時や場所、チケット情報が含まれたウェブサイトに自動的にリンクすることが可能になる。また、そこからチケットをオンライン購入することもできる。
●音声認識が実用段階に

コンピュータのインターフェースが人間に近づきつつある。Motorolaからは、セキュリティ向けの音声認識機能の開発キット「cipherVOX SDK」が発表された。これにより、デベロッパーは簡単に開発中のソフトウエアに音声認識セキュリティ機能を組み込むことができる。同社はその他、音声機能をWebに提供する「VoxML」技術のデモを行なった。VoxMLは、音声ブラウザを開発するための言語であり、HTMLの音声バージョンと言ってもいい。同社広報は「これにより、屋外や車内などインターネットにアクセスできない環境でも、ユーザーは電話でサイト情報にアクセスできる。現在、Weather ChannelやCBS Stock Market、BizTravelなどのサイトと、VoxMLを使用した音声サービスの話を進めている」と語った。同社では、音声認識技術にはNuance Communications、テキストスピーチ技術にはAccuvoiceを使用している。Motorolaは現在、音声アプリケーション開発のオープンプラットフォームとして、VoxMLの標準化を提案している。
一方、Lernout and Hauspieは、スピーチ機能のついたバーチャルペット「Talking Max」を発表した。これはスクリーンセイバー上のバーチャルおうむで、質問に答えたり飛び回ったりすることができる。
●人々は「オープン」の方向へ
今年のComdexは、人々の「オープンソースコード」に対する期待感を大きく反映したものとなった。Linuxパビリオンには多くの来場客が訪れ、Linuxベースのシステム構築を真剣に学んでいた。Red Hatや他の企業からLinux OSの各種バージョンが販売されているが、これらはいずれも15ドル以下と非常に廉価である。また、Applix、Pacific HiTech、S.u.S.E.などはいずれもLinuxベースのビジネスアプリケーションを展示、人気を集めていた。OracleもLinux向け同社データベースを無料で配布するなど、大手ソフト開発企業の多くがLinuxを支持している。今後、Linuxベースのシステムを導入する企業が飛躍的に増加することが予測されている。
('98/11/19)
[Reported by HIROKO NAGANO]