AppleMasters基調講演:Mac愛好家の団結強まる

ニューヨークで7月8-10日に開催された「Macworld Expo」の目玉イベントとして、初日午後、各業界を代表する有名人による「アップルマスター(AppleMaster)」の基調講演が行われた。熱烈なマック愛好家として、ダンサーであり俳優でもあるグレゴリー・ハインズ(Gregory Hines)、アーティストのポール・デイビス(Paul Davis)、音楽家のデビッド・マッシュ(David Mash)、ゲーム開発者のダグラス・アダムス(Douglas Adams)、写真家のハワード・ビンガム(Howard Bingham)、3Dアニメーターのジム・ロドキー(Jim Ludtke)、天体物理学者であり音楽家のフィオレラ・テレンジ(Fiorella Terenzi)、コメディアンのシンバッド(Sinbad)がステージに登場し、各人の得意分野を披露した。
まず、最初に登場したグレゴリー・ハインズは、得意のタップダンスを披露し「マックはダンスと同じだ」、「俺はマックマンだ。マックがなければタップはできない」と踊りながら語った。ハインズは「ソフィストケイティッドレディ(Sophisticated Ladies)」、「ユービー(Eubie)」、「カミン・アップタウン(Comin' Uptown)」を始めとする多数のブロードウェイショーに出演し、1992年には「"ジェリーロール"モートン("Jelly Roll" Morton)」でトミー賞男優部門の最優秀賞を受賞し、俳優としてのトップの地位を確立した。映画では、「レイジ・イン・ハーレム(Rage in Harlem)」、「コットンクラブ(Cotton Club)」、「タップ(Tap)」、「ホワイトナイツ(White Nights)」、「ため息つかせて (Waiting to Exhale) 」などにも出演、1994年には「ブリーディング・ハーツ(Bleeding Hearts)」で映画監督としてもデビューしている。
次に登場したポール・デイビスとデビッド・マッシュは、マックにより可能となったオーディオ、ビデオ、プリントを融合したデジタルメディア・クロスオーバーの実演デモを行った。デイビスはマックを使用したドローイング風のアート映像を披露し、マッシュはその映像のイメージに合わせて会場でキーボードとマックのMIDIシステムで音楽を作った。映像に合わせた素晴らしい音楽を数分間で作成したマッシュは、会場から大きな喝采を浴びた。
デイビスは「最初にマックを見たときは衝撃的だった。この素晴らしい小さなボックスがホットタイプ(ホットメタル)やライノタイプ、その他すべての印刷技術に代わるとすれば、業界の大変革になるだろうと思った。今ではそれが現実になっている」と語った。当時、同氏は「Wig Wag」という雑誌を出版していたが、マックIIとアドビのページメーカー(Adobe PageMaker)を使用してレイアウトを作成することで、少人数、低予算での雑誌編集が可能になった。同氏は「グラフィックデザインに長年携わっている者にとって革命的な第二の波はフォトショップ(Photoshop)だ。これにより、デザイン、タイプ、ページレイアウトに加えてイメージを編集できるようになった」という。またマックにより、ドローイングを使用して以前と異なるやり方でアニメーションを作成できるようになり、より効率的で素早いビデオやアニメ制作が行えるようになったという。
マッシュは、ローリングストーン(Rolling Stone)誌が「音楽とテクノロジーの融合におけるエバンジェリスト」と絶賛する、音楽とマルチメディアの可能性を広げたパイオニア的存在である。音楽や教育分野でマックを駆使した創作活動を展開するマッシュは、国際クイックタイム映画祭(International QuickTime Movie Festival)でベストドキュメンタリー賞を受賞したデジタル映画「Maria Lionza」の音楽を担当している。マッシュはまた、ボストンの名門校であるバークレー音楽大学(Berklee College of Music)で、米国初のデスクトップ音楽(DTM)の4年制コースを開講した。250台のマックを同大学のラボに設置したというマッシュに対して「なぜマックか?」と質問したところ、「MIDI分野では柔軟性があるマックを使用するのが一番で、生徒もマックの方を好んで使用している。以前はラボにウィンドウズを置いたが、生徒は誰も使用しなかった。現在、大学にあるウィンドウズは事務用のみ」との答えが返ってきた。マッシュは現在、アドビ、デジデザイン(Digidesign)、オプコード(Opcode)、コルグとアートプロジェクト開発を行っている。
ゲーマーに熱狂的な人気のダグラス・アダムスは、同氏の最新ゲームタイトル「スターシップ・タイタニック(Starship Titanic)」のビデオを披露した。現在、デジタルビレッジ(TDV)のチーフファンタジストを務めるアダムスは、ゲームタイトル「ヒッチハイカーズ・ガイド・トゥ・ザ・ギャラクシー(The Hitchhiker's Guide to the Galaxy)」、小説「ダーク・ジェントリー(Dirk Gently)」シリーズで有名。「最近、PowerPC 9600/233を購入したが、マシンをISDNに接続して使用し始めるのに15分しかかからなかった。マックはまた、必要なすべてのアプリケーションを走らせても驚くほど速く、他の製品より段違いに優れている。しかし奇妙なことに、マックはベンツやBMWのように他の製品より段違いに高くはない」と語る。また「(『明日に向かって撃て!』の)ブッチ・カシディ(Butch Cassidy)と同様、私は美に対して金を支払っている」とも語った。
30年以上にわたりアメリカの歴史的なターニングポイントを撮り続けてきたハワード・ビンガムは、同氏の撮った厖大な数の写真の一部を公開した。ビンガムはとくに、世界中で親しまれているモハメド・アリ(Muhammad Ali)との親交が深く、アリがバングラデシュやアフリカ諸国へ旅行した際、そのほとんどに同行してアリの写真を撮っている。ビンガムはまた、アメリカで公民権運動が吹き荒れた動乱の60年代、多数の大都市の暴動の模様を写真に収めており、これらの写真の多くはライフ、タイム、ピープル、ニューズウィーク、エボニー誌などに掲載されている。
俳優のリチャード・ドレイファス(Richard Dreyfuss)氏は、当日会場には現れなかったが、ビデオで登場し「PCを使っているときには感じないが、マックを使っているときには友人がそばにいて私を助けてくれているような気がして、仕事が1000倍はかどる」と語った。ドレイファスは、映画「アメリカン・グラフィティ(American Graffiti)」でメジャーデビューを果たし、70年代にはスティーブン・スピルバーグ(Steven Spielberg)監督作品の「ジョーズ(Jaws)」で主役の一人を務めている。77年に「グッバイガール(Goodbye Girl)」でオスカーの最優秀主演男優賞を受賞、「スタンド・バイ・ミー(Stand By Me)」にも出演し、95年の「陽の当たる教室(Mr. Holland's Opus)」では最優秀主演男優賞にノミネートされている。
テクノロジーを駆使して夢のようなイメージと、シューリアリスティックな世界を生み出すジム・ロドキーは、優れた頭脳がどこまでサイバー世界を表現できるかという可能性を追求する優れたアニメータだ。マルチメディアに革命をおこしたCD-ROM作品「フリークショー(Freak Show)」と「バッド・デー・イン・ザ・ミッドウェイ(Bad Day on the Midway)」は、西海岸のアーティストグループ、レジデンツ(The Residents)との共作によるもので、いまだにトップ10タイトルに入るほどの人気ぶりだ。ロドキーはデジタル・ドメイン(digital domain)での長年の経験を経て、86年からコンピュータイラストレータとして任天堂、アブソリュート・ウォッカ(Absolut Vodka)、ニケロディアン(Nickelodeon)とのプロジェクトを行ってきた。ロドキーは現在、3Dパペット技術を使用したアニメーション人形をデジタルで撮影した背景セットに登場させる「Dr. Colossus」を制作中。ミニチュアの登場人物が、巨大な世界のなかで四苦八苦する様子をコミカルに描いたこの作品は、実在と仮想を融合したロドキーの試みの最新作品となる。
天体物理学者であり音楽家でもあるフィオレラ・テレンジ博士は、天体が発する電波を音に変換する技術を使用して作った音楽をステージで演奏して、拍手喝采を浴びた。ミラノ大学で物理学の博士号を持つ同氏は、大学で数学と物理学を教えているが、その一方でオペラと作曲も学んでいる。テレンジは、カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)コンピュータ・オーディオ・リサーチ・ラボで先述の電波変換技術を開発し、この技術を使用してアイランドレコード (Island Records) からCD「ミュージック・フロム・ザ・ギャラクシー(Music from the Galaxies)」を発表した。また、96年に発表したインタラクティブCD-ROM「インビジブル・ユニバース(Invisible Universe)」は、シグキャット・マルチメディアCD-ROM技術賞を受賞している。
最後に登場したコメディアンのシンバッドは、最初から最後までアップルに関するジョークの連続で会場を爆笑の渦に巻き込んだ。最初にマックが登場したときからのマック愛好家というシンバッドは「とにかく、部屋のなかにマックがあることがクールだったんだ。友だちが家に遊びに来て、これは何?と聞いたときに『マックさ』と答える快感がたまんなかったよ」と早口でまくしたてた。また、観客からの「シンバッドのブラウザ・オブ・チョイスは何?」との質問に「昔はナビゲーター一筋だったが、最近のナビゲーターはゴチャゴチャいらないものばっかりで使いにくい。それに比べて最近のIEは使いやすくなってきた」と答え、IEを使用していることをほのめかした。これは、午前中に行われたスティーブ・ジョブズ氏の基調講演で、ジョブズ氏を始めとする講演者すべてがIEを「ブラウザ・オブ・チョイス」と語ったエピソードにもとづくもの。
アップルでは、各業界を代表する50人の有名人を「アップルマスター」として認定し、同社サイト(http://applemasters.apple.com/masters/home.html)でこれらのアップルマスターたちを紹介している。その他のアップルマスターには、音楽家のブライアン・アダムス(Bryan Adams)、俳優のリチャード・ドレイファス(Richard Dreyfuss)、映画監督のシドニー・ポーラック(Sydney Pollack)など多数の著名人が名を連ねている。
('98/7/8)
[Reported by HIROKO NAGANO]