「Tripod」の魅力を探る
文/写真・長野弘子
掲載媒体:ASAHIパソコン(1999年1月号)
目まぐるしく変化するインターネット業界のトレンドの中で、今最も注目を集めているのが、オンラインコミュニティだ。これは、特定の興味を持った人たちが集まり、チャットや掲示板で情報交換を行なったり、自分のホームページを無料で開設できるサイトで、代表的なサイトにはTripodやGeoCitiesなどがある。オンラインコミュニティは、もともとハッカーやラディカルな思想家達の間で、友達を見つけたり交流するためのバーチャルコミュニティとして10年以上も前に始まった。しかし、ここ数年のインターネット熱の急速な高まりと共に、オンラインコミュニティは誰もが使える便利なツールとして、またトラフィックを集める重要なサイトとしての役割を強めている。オンラインコミュニティの中でもとくに人気があるTripodを中心に、これらのサイトの仕組みや将来的な展望を探ってみた。
「無料ホームページ」という大胆なアイデア
92年、当時20歳の学生だったBo Peabody氏により設立されたTripodは、ホームページスペースをメンバーに無料で提供するという大胆な方法で、巨大なオンラインコミュニティの構築に成功した。ユーザーは誰でも無料で登録メンバーになれ、その後は「Pod」と呼ばれるトピック別のオンラインコミュニティに自分のホームページを開設することができる。また、サイト訪問者がメッセージを残せるゲストブックや留守番電話、クイズ、ゲームなども自分のホームページに追加することができ、毎月3ドルでイメージデータベースの使用とチャットルームの追加もできる。「最大のマーケティング手法はユーザーの口コミ」と語る広報担当のKara Verkrich氏は、Tripodでホームページを開設するユーザーは毎日約4000人にのぼるという。
ユニークなサービス「Private Pods」
Tripodは今年2月、大手ポータルのLycosにより5800万ドルで買収された。Tripodではこれにより、Lycosが4月に買収したWiseWireの優れた検索技術を使用することができるようになった。さらにParableとの提携により、メンバーはWebデザインツール「ThingMaker」でデジタル著作権つきアニメーションをホームページに掲載できる。さらに、「プレビルド・テンプレート」を使用してホームページにCDnowなどの電子商取引(EC)機能を簡単に追加できる。Verkrich氏は、これにより「Tripod、メンバー、(CDnowなどの)提携パートナー企業のすべてが利益を受ける」と語る。12月には、ホームページをよりプライベートなものにしたい人のための新サービス「Private Pods」を発表した。これは、メンバーがあらかじめリストに掲載した人物のみしかホームページへのアクセスができないというユニークなサービスだ。
台頭するライバルコミュニティ
一方、他のオンラインコミュニティも勢力を拡大している。Tripodと同様のサービスを提供するGeoCitiesでは12月、300万人のメンバーを達成したと発表。同社は8月にIPOを行ない、全体的な市場の低迷にもかかわらず20 5/16ドル高の37 5/16ドルで取引を終了した。同社は、ページカウンター、検索エンジン、アドレスブック、調査などが自分のホームページに追加できる「GeoPlus」プログラムを毎月4.95ドルで提供している。さらにグレードアップしたいメンバーには、Netopiaのビジネスソフトウエア「Virtual Office」を使用したビデオ会議、チャット、インターネット電話などを毎月49.95ドルで提供している。TheGlobe.comも無料ホームページ提供の他、Microsoftの「FrontPage」をサンプル使用して割引購入できるサービスを提供している。同社は11月にIPOを行ない、公開価格の605%増という54 1/2ドルで初日の取引を終了し、大きな話題を呼んだ。
ポータルもオンラインコミュニティに注目
加熱するポータルサイトの争いの中でも、オンラインコミュニティはとくに重要な役割を果たしている。今年に入り、大手ポータルは一斉にオンラインコミュニティの買収や独自のコミュニティサイト構築に乗り出した。Yahoo!とExciteは今年8月、オンラインコミュニティ「Clubs」と「Community」をそれぞれ開設し、AOLも同様の無料ホームページ提供サービスを始める。これは、ユーザーが何時間も滞在するオンラインコミュニティが、Webユーザーの獲得に最も必要な「粘り気(Stickiness)」をポータルに提供するからだ。これにより、ポータルは広告収入を増やし、電子商取引(EC)による売上シェアリングでも利益を得ることができる。さらに、AOLやNetscapeが構想するように、ポータルがスケジュール管理や組織ミーティングなどのビジネスツールとしての役割を将来的に担う場合、メンバー間のWeb会議などを提供するオンラインコミュニティの重要性はますます高まるものと予測される。