監督:George Tillman, Jr.
「SOUL FOOD」は、封切り直後の10月上旬、興業成績が全米第2位という大ヒットの映画となった。黒人映画でクロスオーバーして大ヒットとなる映画といえば、大抵バイオレンスかセックスものと相場が決まっていた。また、社会問題を扱った深刻な映画は主に黒人コミュニティで歓迎され、一般映画館ではすぐに上映が中止されてしまう。これに反して、この映画は黒人家庭の日常生活をテーマに描いて成功を収めたところが非常に新鮮だった。
同映画は、アーマッドという少年の目を通してママ・ジョーというおばあさん率いる一家を描いたものだ。ママ・ジョーの家では毎週日曜日に家族が集まりソウルフードを作って一緒に食べる習慣になっている。3人娘のテリー(ヴァネッサ・ウイリアムス)、マキシン(ヴィヴィカ・フォックス)、バード(ニア・ロング)はそれぞれ異なるタイプの夫と結婚し異なる生活を営んでいるが、毎週日曜日には夕食会のために必ずママ・ジョーの家に集合する。
ある日、ママ・ジョーの糖尿病がひどくなって手術をすることになった。手術は上手く行かずにママ・ジョーが昏睡状態に陥ると、途端に家族はいさかいを始めて数々の問題が持ち上がってくる。まず、バードの前科持ちの夫、レムが会社をクビになり、職を必死に探すがどこにも雇ってもらえない。バードは昔の恋人に頼んでレムを工場で雇ってもらうが、その後レムは彼女のコネで自分が雇われたという事実を知り激怒する。自分を抑えることができずにバードの店にかけ込み彼女に暴力をふるい、バーでやけ酒をあおりトラブルに巻き込まれ、レムは再び刑務所行きとなってしまうのだ。
一方、テリーとその夫は弁護士として成功しているが、夫は趣味で始めた音楽への熱が高じて音楽家として独立する決心をする。それと同時にテリーとの関係も悪化し、最後は破局へと向かう。ママ・ジョーの死後、テリーは一家団欒の中心地だったママ・ジョーの家を売り払うと言い出し、家の管理費や税金を収める余裕のないマキシンとバードには何の抵抗するすべもない。
この3組の夫婦の人間模様は、それぞれ現在の黒人家庭の置かれた状況を象徴している。数々の差別を克服し白人の何倍も努力して、やっとアッパーミドルという階級に到達したテリー夫妻。また、人生の落伍者の烙印を押されたと同様、まともな仕事に就けない前科持ちのレム。こうしたそれぞれに社会的地位の異なる黒人たちが、互いの絆を失い、黒人コミュニティは分裂していく。
しかし、この映画はそうした社会問題を織りまぜながらも、基本的には黒人家庭の生活を描いて成功を収めた映画として大きな意義を持っている。最近では「Love Jones」もこうしたカテゴリーに入るが、興業的な成功を収めることはできなかった。それと同時期に大ヒットとなった映画は「Booty Call」であり、「ROSEWOOD」もわずか2週間ほどで上映が打ち切られた。
こうした状況のなかで、「Soul In A Hole」や「Hoodlum」より「SOUL FOOD」に足を運ぶ人が多かったという事実は注目に値する。以前、LAのギャングを描いた「ポケットいっぱいの涙」のアレン&アルバート・ヒューズ監督が東京映画祭で「現実はこの映画よりもひどい」と発言し会場を驚かせた。しかし、こうしたギャングの問題も黒人コミュニティのひとつの側面に過ぎない。「Get On The Bus」評でも書いたが (edge. 2号参照)黒人たちの考え方や生活スタイルは多岐に分かれており、問題はその多面性が無視されていることだ。だから、若い黒人男性は皆ギャングだという偏見を持ち、かれらをキャブに乗せない運転手が大勢出てくるなどの差別問題が発生する。「SOUL FOOD」のような映画のヒットは、こうした偏見を無くしていくために重要な役割を果たすことになるだろう。
監督のジョージ・ティルマンは、十代のときから短編映画を撮りはじめ、ミルウォーキーの地元のケーブルテレビで「Splice of Life」という番組を制作した。その後、シカゴのコロンビア大学で映画学科を専攻し、そこで30分の短編映画「Paula」を撮って米中西部アカデミー賞を受賞した。その後、「Scenes For the Soul」は商業的な成功を収め、それを土台にティルマンは今回の映画製作にいたっている。
また、同映画のプロデューサーは、トレイシー・エドモンド。トレイシーの夫、ベビーフェイスは今年、12部門のグラミー賞にノミネートされいまやR&B界の大御所になりつつある。今回、彼は同映画のエグゼクティブ・プロデューサーを務め、テリーの夫のバンド・メンバーとしても映画に登場している。
Posted by hiroko at September 21, 2001 05:01 PM | TrackBack