9月13日、ニューヨーク大学で、ブラックパンサーに関する映画上映会とパネル・ディスカッションが行われた。会場のカンターホールに着くと、入り口付近からすでに1ブロックほどの長蛇の列ができていた。まず、リー・ルーリー監督のドキュメンタリー映画「ALL POWER TO THE PEOPLE」が上映され、その後、ブラックパンサー関係者によるパネル・ディスカッションが行われた。
映画は、ブラックパンサーの始まり、その活動内容、またパンサーの運動に対する米政府の弾圧などを、総計100時間にもおよぶ45人へのインタビューを通して様々な角度から赤裸々に描いている。CIAやFBIがいかにブラックパンサー・メンバーを弾圧し暗殺していったかというアメリカの隠された歴史を、映画は1960年代のアメリカの主要指導者、マルコム・X、マーティン・ルーサー・キング牧師、ジョン・F・ケネディ、ロバート・F・ケネディなどの暗殺とともに我々の顔面に突きつける。
ブラックパンサーは、1966年、黒人コミュニティを黒人自身で改善するために雇用増加、教育の充実など10カ条の目標を掲げて設立された。そのなかには「資本家たちの搾取から黒人コミュニティを守る」(第3条)、「黒人に対する警察の暴力の即時停止」(第7条) などという現在でも通用する内容が含まれている。
ブラックパンサーは急速に拡大していき、その活動はオークランドのみではなくニューヨークやシカゴなど全米へと拡がっていった。毎日1万人への食料提供、様々な政治的抗議など、パンサーの活動はだんだん政府の脅威となり、そこから手段を選ばぬパンサー破壊工作が開始されていった。ボビー・シール、ヒューイ・P・ニュートン、エルドリッジ・クリーバーなどの有力なリーダーが不当逮捕され、シカゴの有能な若手リーダーのフレッド・ハンプトン(21歳)も暗殺された。就寝中のハンプトンに無数の弾丸を打ち込んだ警官らは、逮捕もされず何の刑罰も受けていない。
映画上映後にパネル・ディスカッションが行われたが、最初にリー監督は「この映画の本当の監督は、映画に登場するすべての人々や活動家、また観客だ」と語り、会場からの喝采を浴びた。キャサリン・クリーバー(エルドリッジの妻、ジェロニモ・プラットの弁護士)、ソフィア・ブカリ(ムミア・アブ・ジャマールの弁護団の一員)、ハーマン・ファーガソン(元ポリティカル・プリズナー、マルコム・Xの設立したOAAUのオリジナル・メンバー)、ジョナサン・ルーベル(ムトゥル・シャクールの弁護士)、ジョン・ジャッジ(CIA研究者)らが、それぞれの視点からブラックパンサー運動とそれに対する政府の弾圧を語った。
クリーバーは、彼女がブラックパンサーに参加してからというもの、現在まで政府の「コインテルプロ」(COINTELPRO:COunter INTELligence PROgrams) の標的になっていると語った。コインテルプロとは、あらゆる手段を尽くして民族解放グループ(とくに黒人)を破壊するFBIのタスクフォースで、マーカス・ガーヴィー運動に対する破壊工作あたりから本格化したと言われている。
また、ルーベルはアメリカの歴史は「スニッチング」(Snitching)の歴史だと語った。スニッチングとは、無実の罪をでっち上げ民族解放グループのメンバーを陥れることを指す。さらにファーガソンは、奴隷状態を維持するために政府は「ハウスニグロ」を使うとし、それがNAACPだと語った。
数々の暗殺や弾圧により、1960−70年代の民族解放グループ運動はほとんど破壊され、多くの活動家がいまだに無実の罪で刑務所に閉じ込められている。映画の最後で、日系運動家ユリ・コウチヤマさんは「我々は、刑務所で現在も戦っている人々を決して忘れてはならない」と語った。(97/11/01)