September 26, 2003

エドワード・サイードが67歳で死去

 イスラエル-パレスチナ問題の論者、またイスラム世界の代弁者として著名なE・W・サイードが9月25日、NY病院で亡くなった。ちょうど、彼の『戦争とプロパガンダ』(2002年)を読んでいたところだったのでショックだった。
 
あくびさんから:


朝おきたら北海道で地震、そしてサイードが死んでました。
condolences, 合掌。

Znet
Guardian
Indymedia NYC
Indymedia Chicago

 彼はイギリス委任統治下のエルサレムで生まれ、エジプトのカイロにあるビクトリアカレッジで教育を受ける。その後、米国に渡り、プリンストンおよびハーバード大学を卒業。1978年に『Orientalism』を著し、西洋世界の持つイスラム文化への認識を大きく変えることに貢献した。コロンビア大学で、英文学、比較文化論を教えていた。
 

 『戦争とプロパガンダ』には、2002年2月に、ヨーロッパの主要新聞で大々的に取り上げられた米国の知識人らによる共同声明「われわれは何のために戦うのかーーアメリカからの手紙」のことが書かれていた。米国の戦争は悪と戦う「正義」の戦争であり、正しいのだということを宣伝する内容だが、この宣伝の資金は、キリスト教にもとづく価値観を広めるInstitute for American Values.orgという団体から来ているのだそうだ。

 そこには、意見の不一致があるときには相手を思いやる、良心と信仰の自由が米国の価値観だと書かれているが、こうしたプロパガンダをサイードは具体的な例を挙げながら論破している。彼がいなくなった今、誰が米国でイスラムの声を代弁してくれるのだろう、、。

同書から:


 アラブ系やムスリムのアメリカ人で、自分が敵方に属していると現在感じていないような人物をわたしは一人も知らない。現時点で合衆国に住んでいるということは、疎外感と幅広い敵意の対象として名指しされるという不愉快きわまりない経験をわたしたちに与えている。…何百人というアラブ系やムスリムの若い男たちが、警察やFBIによって不審尋問のために逮捕され、しかも拘留される者がやたら多い。…人前でアラビア語を話すことはおろかアラビア語の文章を読むことさえ、ありがたくない注目を招く可能性が高い

Posted by hiroko at September 26, 2003 11:12 AM | TrackBack
Comments

以前、96年のアメリカの通信法改正に含まれて成立したCommunications Decency Actの批判記事を書いたとき、「アメリカが世界で最も進んだテクノロジーを持った宗教ファシズム警察国家に変貌する」シナリオを予想したことがありました。

調べている内に出てきた、民主党も共和党も気をつかうキリスト教右派政治圧力団体の動き、毎会期提案される憲法改正して星条旗を燃やすことを犯罪にしようとするFlag Amendment、野放しの中絶医に対する攻撃、ACLUが各地で展開してるキリスト教以外の住民や生徒に対する不当な扱いへの裁判の数々、などを知ると、アメリカの日常に蠢いているキリスト教ファシズムの台頭を見た気がして、気持ちが悪くなりました。多様性を受け入れていると思っていたアメリカは、実は大部分の人々は自分の宗教観以外を無視することで成り立っている気がしたのです。単純なus or them思考。一度themにカテゴライズしたらもうdetachmentでき、どんな扱いをしてもかまわない、という..。

今は残念なことにその予想が現実になって来てしまいました。ブッシュが大統領職を奪う以前からあった下地が9/11の恐怖で一気に固まってしまったようです。でも固まってしまった意識を変えるためには、アメリカに「世界は多様でありアメリカと同様には考えないのだ」と伝え続けるしかないのでしょう。

Posted by: gt at September 26, 2003 12:58 PM

ブッシュの演説で有名なセリフ「Either you are with us, or you are with the terrorists. (Applause.) From this day forward, any nation that continues to harbor or support terrorism will be regarded by the United States as a hostile regime. 」がそれを雄弁に物語ってますね。
http://www.whitehouse.gov/news/releases/2001/09/20010920-8.html

米国に住んでいる英国人の友人と話していたとき、「米国は、ヨーロッパで弾圧され、ほかの国に追い出された宗教的狂信者が作った国だ」と冗談で言ったのを思い出しました。もちろん建国の理想に燃えていた人達もいたのでしょうが、自分達の思想や宗教的信条が正しいと思い込むあまり、他の人達をすべて否定する人達も多数いたのでしょうね。今は後者の考えをもった人達が政権を握っている感じがします。

P.S. 声高にオサマ・ビン・ラディンやサダム・フセインを糾弾するブッシュが、なんだかジョージ・オーウェルの『動物農場』の最後のシーンに出てくる豚と重なります。人間の支配から逃れるために蜂起した動物たちが、だんだんと仲間だった豚たちに支配されていくのですが、最後には豚は人間と見分けがつかなくなってしまいます。ブッシュも演説の内容を聞いていると、彼が敵と称する人達と大差がないような気がします。

Posted by: hiroberg at September 27, 2003 08:38 PM

(Applause.)←コレで思い出した。ブッシュがスピーチする時は必ずステージの後ろや脇に人が並んでいて話しの切れ目ごとに拍手しますよね? アレはじつは全部stage managedされてるんだそうです。イラク侵略の直前、ブッシュはその件についてEU議会で話す機会があったのですが、ホワイトハウス側が「演出されたstanding ovationがあること」という条件を出したために流れたという話があります。ここまで来るともう度を超してると思えて、苦笑じゃすまないかも。

http://www.mirror.co.uk/news/allnews/page.cfm?objectid=12713155&method=full&

BUSH: CLAP ME OR NO EU SPEECH
........
GEORGE Bush pulled out of a speech to the European Parliament when MEPs wouldn't guarantee a standing ovation.

Senior White House officials said the President would only go to Strasbourg to talk about Iraq if he had a stage-managed welcome.

A source close to negotiations said last night: "President Bush agreed to a speech but insisted he get a standing ovation like at the State of the Union address.

"His people also insisted there were no protests, or heckling.
.......

Posted by: gt at September 27, 2003 09:32 PM

何だかどこかの国の独裁者みたいになってきてますね。

『素晴らしき新世界』の著者ハックスリーの1962年の講演で、プロパガンダとテロリズムに関して興味深いことを話していました。彼によると、オーウェルの描いた『1984』のような専制国家は西側諸国ではおそらくありえないだろう。むしろ、一見自由に見える社会のなかで、巧妙に張り巡らせられた情報や価値観を人々が消費することで思考が統制されていく。また、テロリズムのような恐怖心/心理的圧力を与えることで、心理統制がしやすくなるとも言ってます。

催眠術、聴くだけで成功するCDみたいな商品も、実際に効果が出るのは全体の20%だけで、60%は何となく効いたかな?くらい、あとの20%はどうやっても効果がないそうです。でも、疲れているときや恐怖心を持っているときは人間の思考能力が弱まるので、洗脳されやすいそうです。911テロのあとブッシュの支持率が一時的に高まったのも、洪水のように流されるプロパガンダ情報に中間層の6割の人達が洗脳されたからという見方もできるかもしれません。ちなみにヒトラーは、演説するときはいつも人々が疲れている夜だったそうです。
http://propagandamatrix.com/multimedia_priorknowledge_huxley1.html

Posted by: hiroberg at September 28, 2003 04:00 PM

あとヒトラーが演説や集会の時に音響効果を利用した話もよくいわれてますね。特に地鳴りに近いくらいの重低音を流したという話。それくらいの周波数の重低音は恐怖心を煽るのです。
以前に音響関係の仕事をしていたときpsycho acousticの研究も少ししましたが、人間には無意識にでも特定の感情を刺激されてしまうな音があるようです。恐怖を刺激するものも高揚されるものもあります。たぶんこれらは大昔からの記憶に関係してるとは思います。地鳴りのような重低音は地震や火山の爆発の予兆だったりしますから。

他はヨーロッパの教会がものすごく長いエコーが残る建物になっているのも、そこから敬虔なものを感じてしまう人間の心理に訴えようとしたものだという分析もあります。それでいくと、ラジオで911の後に流されていたニュース間の音のコラージュしたジングルがあったのですが、ブッシュの声に教会の中で聞こえるようなエコーがつけてあったのに私は危険なものを感じました。

Posted by: gt at September 28, 2003 04:56 PM

確かMP3ファイルの圧縮原理にも、psycho acousticをベースとした技術が採り入れられていたと思います。圧縮率を高めるために、人間の耳に感知されない音を取り除くという技術です。でもMP3の音質に関しては、良くないという人もいればMDよりも良いという人もいて、評価が分かれますね。

ブッシュの声にわざとエコーをかけている!?下手な歌手のように下手な演説をエコーでごまかしているのかも、、、というのは冗談ですが、ロシアや米軍でも psycho- acousticを使って兵士を殺人マシンに変える研究をやっていたというのは聞いたことあります。もしかしたら自分たちも気づかないうちに影響を受けているのかもしれません。。

Posted by: hiroberg at September 29, 2003 05:43 PM

psycho acousticをベースとした技術もデジタル回路で実現するのとアナログ回路で実現するのとで、聴感上けっこう違いますね。MP3のものは全部デジタルで実現してるので、生音と比較すると若干の異質物感があるでしょう。MDのはもう少し変な感じがしますね。これらの技術は、サウンドエンジニアや生音の楽器を扱うことが多いクラシック演奏家にはあまり評判は良くないようです。MP3は聴感でポップ・ロックに合わせた圧縮技術のためでしょう。今のCDは16bitの直線スケールで毎秒44100回のサンプリングで音声信号からデジタルデータに変換しますが、サウンドエンジニアはそれでも不満なので今のスタジオ機器は24bitの96kHzサンプリングが主流になっています。ところが再生側の機器がそんな圧縮なのは、エンジニアとしては気分が盛り下がるものがありそう。

音の影響は思ってるより大きいことがあります。人を殺人マシンのようにできるかはどうかとしても、精神的に緊迫感を持たせて好戦的にすることは可能だと思います。WakoのBranch Davidian籠城事件のときのニュースで、FBIが建物の周りでヘビメタをかけ続けていた話を聞いたのですが、これはストレスを与えて早く投降させようとしたのでしょう。しかし逆に好戦的にさせた部分もあるかもしれません。

Posted by: gt at September 30, 2003 09:21 AM

ヘビメタのような音楽は、胎教などで聞かせると胎児に悪影響を与えると聞いたことがあります。でも、ヘビメタが好きな人にヘビメタを聞かせると、脳波がちゃんとクリエイティブな状態のα派になるそうです。

クラシック音楽のなかでも、モーツアルトの「二台のビアノのためのソナタ ニ長調K.448」を聞くとIQが8~9上がるそうです。「モーツアルト効果」と呼ばれていて、ベートーベンでは効果がないそうです。不思議ですね。

ところで、最近シャープの1bit audioというのが人気だそうです。
http://www.sharp.co.jp/1bit/

これまでのステレオは、アナログからデジタルへ変換する過程で情報の間引きがあったけど、1bit audioは超高速サンプリングで音の質感をそのまま変換するそうです。

Posted by: hiroberg at October 2, 2003 02:19 PM

ついに現職FBIエージェントがStarTribune紙でアッシュクロフトに対する批判を表明しました。先日の演説にあった「今アメリカ人は人間の自由の歴史の中で一番自由だ(Americans are "freer today than at any time in the history of human freedom.")」という(狂信的?)発言に異議を唱えています。

Coleen Rowley: The wrong side of 'us vs. them'
http://www.startribune.com/stories/562/4147904.html
http://www.onlisareinsradar.com/archives/001871.php

この中でRowleyは、「us vs. them」思考が何をアメリカで今引き起こしているのかや、政府関係で働いている中で批判的な発言をする者はすぐにthem扱いされるという魔女狩り圧力があることに触れ、「9/11以前より今がもっと自由だと感じてる人なんて一体何人いるんだ?」と批判しています。

Posted by: gt at October 18, 2003 01:53 PM
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