September 28, 2003

CPSR/Japanの年次大会

 IT技術者やエンジニアの社会的な責任について考える公益法人であるCPSR(社会的責任を考えるコンピュータ専門家の会)日本支部の年次大会が9月26日に開かれた。CPSR日本支部は 2002年6月に設立されたが、この1年間を通して、住基カードのセキュリティについての問題の解明、通信傍受法にしたがった仮のメールボックスの問題調査、ほかにもインターネットのフィルタリングソフトやサイバー犯罪条約に関する調査など、さまざまな調査や活動を行っている。
 
 2回目にあたる 年次大会では、大々的には報道されていないが非常に重要な情報が多数議論された。スピーカーは山根信二さん、藤本一男さん、崎山伸夫さん、伊藤譲一さん、高間剛典さん。

 たとえば、住基ネットの問題では、CPSR/Japan代表の山根さんのWhat's New or What's going onに詳しく書かれているように、住基カードのセキュリティ評価・認証は、設計書レベルで「ISO15408」の基準を満たせばOKということになったそうだ。ということは、実装では基準を満たす必要がないということ?政府側は、住基ネットは住基法にもとづいて自治体が管理するものなので、政府基準を必ずしも満たさなくてもいいと言っているそうだ。

What's New or What's going onから:


「セキュリティ評価・認証」って何ですか?
調達する製品がどの程度のセキュリティ基準を満たしているかを第三者が審査する仕組みです. 住基カードにはISO15408に基づく評価・認証製品を使うことが明記されています. しかし,いざ調達段階になって 「当分の間は、ISO/IEC15408の評価を受け合格した設計書に基づき作成されたカードを用いる」よう変更がありました (住民基本台帳カード調達仕様書(案)および平成15年総務省告示第392号) これは,当分の間,設計書さえ基準を満たしていれば実装については問わないということです. つまり現行の住基カードには,(期間や費用や実装上の理由で) 設計後の開発・実装・テスト段階におけるチェックをパスできなかった製品があることを意味します. 地方自治体が調達した住基カードは ISO15408に基づく評価・認証製品ではありませんし,海外市場では国際基準に達しているとは見なされません.

 
 また、たとえば出会い系サイトの規制法案に関しての議論では、サイトをP2Pで構築した場合はどうなるのか、成人であることを認証するための仕組み自体が法案に含まれているのか、その場合の認証システム構築には利権がからんでいないかなど、いろんな問題点が提起された。
 
 通信傍受法のための「仮のメールボックス」の問題では、IPアドレスやタイムスタンプの記録がないシステムで、メールの中身だけを記録する現行のシステムでは、裁判の証拠として使うことができるかどうかという疑問、さらにはえん罪に発展する危険性も議論された。
 
 ほかにも数多くのトピックが議論されたが、全体的に感じたのは、政府と官僚に技術的な専門家がいないため、専門家の目から見ると驚きを通り越して苦笑するしかない法案やプロジェクトが次々と出てくるということ。それを防ぐためには、出てから必死で反対するのではなく、政治家がもっとよくプライバシーやセキュリティ問題、また技術全般について理解してくれるような「攻め」に転ずる必要があるということで意見が一致した。
 
 Joiさんは一例として、政治家がプライバシーのことを真剣に考え、プライバシー省やプライバシー大臣を作って官僚を動かすように啓蒙することを挙げ、山根さんは、コンピュータの学会で議員を呼ぶなどで互いの交流を深めることを挙げた。問題が山積していて、聞いているだけでも頭が痛くなってきたけど、会場にいた深田憲太郎さんの「インターネットの歴史なんてまだ赤ん坊のようなものなんだから、混乱していて何も分からない状態が当たり前。これから、僕たちが育てていかなくてはいけない」という言葉に励まされた。

Posted by hiroko at September 28, 2003 05:15 PM | TrackBack
Comments

CPSR/Japan Annual Meetingでご一緒した新井です。
CPSR会員にとっても切り口が多数ありすぎて、この分野はとても混乱させられます。
どこからどう手をつけていいのか、ですね。

Posted by: arai at October 1, 2003 07:03 PM

新井さんへ
先日はお疲れさまでしたー。そうですね、自分達にできるところから少しずつやっていくしかないですよね。新井さんのblog見たら、インド料理のページとか韓国留学についてとか面白いですね。今度お話聞かせてください。

Posted by: hiroberg at October 2, 2003 05:22 PM

はい、そのためにも勉強をと思うのですが、主要な本を読むだけでも大変です。
南インド料理と韓国語はさいきんの重要トピックスです。
これももっとまとまった資料を書いているのですが、なかなか時間がありません。

ぜひ今度いろいろ情報交換しましょう。

Posted by: arai at October 7, 2003 11:09 PM

CPSR年次大会に参加予定でしたが、直前の仕事 :-( によりうかがうことができませんでした。ごめんなさい。

確かに問題山積ですね。一つのことを考えれば別のことも芋づる式に出てくる気がします。政府と技術の乖離は全く仰るとおりで、私のボスも私も頭を抱えながら、どう戦おうか、というところです。どちらも違う論理で動くから(違う視点で利益を見出すから)なんとかその溝を埋めたいですね。

Posted by: ako at October 13, 2003 02:06 PM

その通りですね。「政府機関の内部に入って中から変えていくことはできるのか」とCPSR関係者に尋ねてみたら、それは難しいとの答えが返ってきました。どんなに頑張っても内部のシステムに組み込まれてしまい、身動きが取れなくなる可能性が高いとのことでした。

逆に、政府のIT政策に反対するだけのNGOも、影響を与えるのは困難です。そこで、きちんとした調査報告書や提案書を提出し、政府の決定に影響を与えることのできる専門家集団を形成しようというのが、CPSRの役割ということです。

ところで、akoさんのblog面白いですね。Michael Moore監督の「Bowling For Columbine」、ほんと考えさせられます。大学のジャーナリズムクラスでMichael Mooreの作品を学んだことがあるのですが、Bowling~もいいけど「Roger & Me」と「The Big One」もいいですよ。Bowlingよりいいかげんで荒削りなインタビューが楽しいです。とくにThe Big Oneを観ると、サンフランシスコのヒッピーに混じってNike Shoesの不買運動をしたくなります。

Posted by: hiroberg at October 14, 2003 10:24 AM
Trackback
Post a comment









Remember personal info?