October 02, 2003

情報社会の著作権のあり方とは?

 2003年10月1日、慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパスで、合同シンポジウム「著作権とP2P」が開催された。新しい情報社会の著作権について議論するパネルディスカッションのパネリストは以下の通り:


コーディネーター:
萩野 達也 慶應義塾大学環境情報学部教授

パネリスト:
久保田 裕(社)コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)専務理

渡辺 聡(社)日本音楽著作権協会(JASRAC)送信部長

今村 二郎(社)日本レコード協会(RIAJ)広報部担当部長

田中 久也 弁護士

徳田 英幸 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科委員長

稲蔭 正彦 慶應義塾大学環境情報学部教授

 
 全体的な感想としては、リスナーと音楽業界の意識の乖離がすごいなあと思った。ナップスターだって、彼らのおかげで米国のブロードバンド人口は飛躍的に伸びたし、それからビジネス向けP2Pソフト開発も盛り上がるなど貢献している部分もある。著作権に対する意識は、消費者の間でそんなに低くはないと思う。好きなアーティストだったら、どんなことがあってもCD買うしライブも行く。CDが売れない原因は、そこまで魅力的なアーティストがいないから、頑張って買おうと思わないだけなのではないだろうか。それを「消費者は自分勝手で意識が低いので、CCCDの導入が必要となった」というレコード業界の主張には疑問が残る。

 また、P2PソフトとCD売上減少の関連性を調査することは難しいというけど、何らかの裏付け調査もなしに、CD売上の減少はP2Pソフトを使った違法コピーによるもの、と言えるのだろうか?新たなビジネスモデルの模索にしても、すでに成功している企業は何社かあるのに「マイクロペイメントは難しい」って、、。もうそろそろサービス開始が待たれる新生ナップスター、日本ではうまく行くのだろうか。

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主旨は以下の通り:

* 田中 久也(弁護士)
 デジタル著作権にかかわるなかで気づいたこと。多くの人にとって、デジタルコンテンツを盗むことに対する心理的な葛藤が少ない。自分の講義ノートを友人に貸して、友人が勝手にコピーしてネットでばらまいたら、どう思う?それと同じことがP2Pソフトを使って行われている。

*徳田英幸(慶応義塾大学/メディア研究)
 P2P技術はポテンシャルが高いので、新たなビジネスモデルを模索するべき。ソフト開発者は責任を取るべきかどうかという難しい問題がある。技術自体が悪いのではない。いろんな使われ方をするので、安心した安全な新しいP2P技術を開拓してほしい。
 健全なユビキタス社会の発展を促す鍵は、オープンソフトの活用にある。何が安心か、何が安全かを明らかにするため、コードのオープン性は重要。新しいソフトを作ったら、コードはぜひオープンにしてほしいなと思います。

*稲蔭正彦(慶応義塾大学/環境情報)
 作る側、それを換金する側の立場から語る。ミッキーマウスを素材にしたアンディ・ウォーホルの絵を米国で購入したが、帰国する際に空港の税関で止められて、その絵が問題になる。この絵は個人利用のみだと説得して、やっと持ち運ぶことができた。ほかの人のもっている権利を、許可を得て作品化しているのに、問題が起こる。
 クリエイターにとって大事なことは、1)自分が創作したことを示すこと。勝手に改ざんしてほしくない。自分の著作を認めてほしい。2)つくることで生活し、経済的な基盤を得ること。
 しかし、問題が起こっている。エンドユーザーから見るとファイル交換がタダなので、どんどんファイル交換すると、クリエイターやディレクターからみると売上が下がる。コンテンツの質の保証ができない。
 現在の著作権法は、流通の仕組みをベースに組み立てられたものなので、それを単純にデジタル配信での仕組みに使っても大丈夫なのか?コピーをすればするほど、クリエイターにとってプラスになるような仕組みは考えられないのか?クリエイターがコンテンツの使い方を定義する技術は作れるのか?
 解決策として、クリエイターの希望を技術でサポートすること、新しいコンテンツビジネスモデルを模索すること、国境を超えるネット時代の法整備をすることを提案

(Q&A Session)
Q: ファイル交換を実際に行っている人だけではなく、P2Pソフト開発者やプロバイダーにも法的罰則を与えることは行き過ぎではないのか?

久保田:
WinMXが摘発されたあと、摘発されないように暗号技術を強化した新バージョンができた。こうした悪意ある開発者の行為に対して、法的な政策を取れる段階にまで、ファイル交換に関しては来ているのではないか?普通の人達は、簡単にツールを開発できない。だから技術者レベル、ISPレベルで規制すべきだ。

徳田:
Freenetのような独裁政権に対抗するソフトもある。

今村:
対価が払われないと、製品サイクルがこわれる。

渡辺:
電話の着メロの売上が伸びているのは著作権が確立されているから。

Q:CDやDVDが高すぎるから、ファイル交換に流れるのでは?

久保田:
2000円で高かったら買わなければいい。自分で値段をつけることができる。

徳田:
トランザクション毎の値段がつけることができれば、いいコンテンツは高く、へんなコンテンツは売れずに消えていく。


Q:音楽を聴くためにCDを買っているのであって、歌詞カードとプラスチックケースは余計なもの。それが価格を押し上げている。消費者の利益を守るためには、ソフトだけ提供すべきだ。

稲蔭:
Apple iTune Storeはまさにそれ。合法的に買う人はたくさんいる。

徳田:
抱き合わせ販売をいやがっているということですよね。

久保田:
ブランドやレーベルはリスクを背負って、セレクトしているんだから、それくらい高くても当然。

Q:P2Pソフト開発者やユーザーを法的手段に訴えるには、巨額なコストが必要になる。果たして、それに見合う結果が出るのか?ファイル交換で、実際にどこまで損失ができているのか?

久保田:
学生さんに実証をやってほしいんですね。調査してほしい。

今村:
P2Pの被害はつかみにくい。アップロードは分かるけど、DLは分からない。


Q:利便性がよければお金を払うんです。しかし、その結果がレコード会社のCCCD導入ですか。消費者を馬鹿にし、権利者の立場に安住している。


Posted by hiroko at October 2, 2003 04:12 PM | TrackBack
Comments

はじめまして。shunkaeonと申します。

P2Pに関して、面白そうな講演があったんですね。

米国ではシングルの売り上げが増えていて、その一因にP2Pの存在が言われていますよね。

自分は買ったCDをMDに録音して、音楽を聴くのですが、
CCCDによってそのようなライフスタイルが不可能となってしまいました。
以前は月に最低5枚はアルバムを買っていたんですけど、いまはまったく音楽を買わなくなってしまいました・・・。
自分でいうのもなんですが、私のような「優良顧客」にこんな仕打ちを・・・との思いを抱かざるを得ません。

ただ、AppleのiMusicの成功を機に、米国では状況が変わりつつあるようなので、今後には期待してます。

Posted by: shunkaeon at October 3, 2003 02:27 PM

売上の減少という業界のレトリックにのってしまうのはどうなのかな。

そもそも違法コピーをすることは売上の減少とは関係なく犯罪で、大規模ファイル交換システムの規制は、まずその文脈で語るほうが望ましいです。

売上の減少という業界保護の文脈から議論がスタートするのは危険だと思います。とくに現状では売上と違法コピーの因果関係すら明らかでないわけですから。

メディア/ソフトウェア側のコピー規制技術は、カジュアルコピーの防止には効果があれども、海賊版の流通には無効です。だからもちろんファイル交換ソフトにも無効です(誰かひとりがプロテクトを破ればおわり)。不具合の多いCCCDを導入して消費者の反感を買う意味があったのかどうか。

だから最終的にはハードウェアへの規制という方向へ向かうでしょう。コンピュータや録音/再生機器に"自由"があるのが問題なわけで、認証されたコンテンツしか再生しないような機器による市場支配を狙うことでしょう。その一例がDVDのリージョンコードですね。

コピー規制をすすめるコンテンツ業界というのは、自分たちのコンテンツしか保護しないことにも注目すべきです。彼らは著作者/権の保護を狙うわけではなく、コンテンツ市場の独占こそを目指しているのです。

市民/消費者の立場としては、違法コピーを規制しつつ、自由をも確保していく、第三の道を早急に模索していかなければいけないでしょう。

Posted by: arai at October 3, 2003 03:22 PM

shunkaeonさん:
私はそのままディスクマンで聴いてますが、確かに最近は機器もメディアフォーマットも増えてきていますよね。CDを購入した人は自由に楽曲を転送できるような仕組みが確立されないまま、「消費者は違法コピーをするものだ」という前提のもとにコピープロテクトをかけられると状況はもっと悪化するような気がします。「技術の乱用」という意味では、彼らが目の敵にしているP2Pで音楽ファイルを違法コピーしている人達と同じようなものだと思います。

iTunes Music Store、日本でも早くサービス開始してほしいです。”合法的”なナップスター2は米国で来週からサービス開始されるので、その売上次第で日本の音楽業界も変わるかもしれません。

Posted by: hiroberg at October 3, 2003 05:07 PM

>>米国ではシングルの売り上げが増えていて、その一因にP2Pの存在が言われていますよね。

自己レスですが一応ソースを。
http://www.wired.com/news/digiwood/0,1412,60282,00.html
http://www.hotwired.co.jp/news/news/business/story/20030908104.html

Posted by: shunkaeon at October 3, 2003 05:15 PM

araiさん:
シンポジウムでのQ&A Sessionでも、CDの売上減少とファイル交換ソフトに、本当に関連生があるのかが議論になっていました。個人的には、音楽業界がきちんとした調査をしないまま、ファイル交換ソフトが悪いと主張しても、あまり説得力がないと感じました。

それよりも、iTunes Storeのようなサービスを提供するとか、何か新しいビジネスモデルを作るほうがいいかもしれません。この記事では、NapsterならぬSnapsterを提案していますが、なかなか面白いです。
http://www.pbs.org/cringely/pulpit/pulpit20030724.html

10万CDを所有するMutual Fundのようなものを作ることで、それに投資した人は音楽の所有者となり、自由に音楽をDLしたりコピーできるというものです。現行の著作権法では、所有者が所有している限りは音楽のDLやコピーが認められているので、その法の盲点をついた仕組みともいえます。DLは1曲につき5セント、CD1枚につき50セント、100万人の共同所有者が1か月に1枚のCDをDLすれば、1年で600万ドルの売上になるとのこと。:)

Posted by: hiroberg at October 3, 2003 07:30 PM

長々書いてしまってごめんなさい。

私の主旨は「音楽業界の売上減少と、ファイル交換ソフトによる違法コピーの悪さは関係づけるべきではない」ということです。

いわゆるファイル交換ソフトでは違法コピーをしている人達ばかり大勢いるのはWinMXでも少し使ってみれば明白です。音楽業界の売上が増えようが減ろうが、これは明白な犯罪行為で規制されるべきことです。

ただし昔のテレビ番組など入手困難なメディアの再配布といった、違法だけどフェアユースといえなくもない微妙な領域を担保しているという機能はありますね。

そしてCCCDは稚拙で消費者の既得権を侵害しますし、ファイル交換ソフト作成の禁止などという無茶な立法はソフトウェア技術へ与える害が大きいでしょう。

こういう文脈は一つ一つ分けて考えられるべきだと思います。

Posted by: arai at October 5, 2003 01:46 AM

「分けて考える」に関連していうと、「ある作品を作って著作権者になる」ということと「その作品によって収入を得る」ということも違うことです。今の、特に音楽販売に限って言えば、音楽出版・流通・販売はすべてレコード会社が持っているので、ミュージシャンはそのシステムに乗る以外の選択肢がまったくないと言っていい状態です。

さらにミュージシャンがCD販売から得られる印税は良くて売値の10%です。これは著作権法で決まっている比率ではなく、レコード会社とミュージシャンが契約する条件だということに注意する必要があります。実際は契約条件でもっと印税率は低かったりしますし、多数のメンバーで構成されるバンドはその10%程度をさらに人数で割るので、1人あたりの収入はすごく小さいものになってしまいます。

さらにCDには定価が設定されているので、ミュージシャンは自由に価格を決めることもできません。一晩で録音した曲も3カ月かかって録音した曲も同じ値段で売られています。これは、例えば絵や彫刻のアーティストなら自分で価格を決められることを考えても、変な話だと思えます。

ファンの立場から考えても、自分がCDに対して払ったお金の内\200程度しかミュージシャン自身に行かないということに、何か違和感を感じませんか?

このシンポジウムのパネルに源著作者であるはずのミュージシャンがまったく参加していないことにアンバランスなものを感じました。レコード会社は「著作者との契約」によって作品を販売してるわけで、JASRACも管理代行者です。彼らの発言は著作権者自身のものとは違うはずです。

さらに90%以上のミュージシャンは録音された音楽からの収入では生計を立てることができてないという見方があり(私の知ってる限りの実状もそうです)、もしそうならシンポジウムのパネルに参加するミュージシャンも双方から代表を選ぶべきでしょうね。例えば10人選んで「生計が経ってる1:経ってない9」という比率で参加してもらわないとバランスの取れた発言も得られないかもしれません。

Posted by: gt at October 5, 2003 02:41 AM
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