March 20, 2004

クリエイティブ・コモンズ@ICC


 今日は、ICCで「クリエイティブ・コモンズ」に関するシンポジウムが開催された。パネラーはラリー・レッシグ教授、山形浩生さん、そしてJoiさん。最初にレッシグ教授からクリエイティブ・コモンズ(CC)の総括を述べるプレゼンテーションがあり、その後は3人のパネルディスカッションとなった。

 レッシグ教授のお話は、2003年12月に来日した際に話したことと重なる部分もあったが、新しい話も盛りだくさんだった。たとえば、MoveOn.orgというサイトが主催した『Bush in 30 Seconds』というプロジェクトは、30秒のブッシュ政権批判コマーシャルを募集し、優秀賞を取った作品を「スーパーボウル」で放映するという企画。これらの作品はすべてCCベースで、ぜんぶで1,500以上もの応募が寄せられたという。最優秀賞のブッシュ批判コマーシャルは、子供が工場で働くシーンが続き、最後に「Guess who is paying Bush's 1 trillion deficit」という言葉で締めくくられる、非常に考えさせられる内容だった。

 現在、CCベースのコンテンツは世界で140万以上に増えているそうだ。日本でも大きなムーブメントになることを期待したい。

シンポジウムの要旨は以下↓


■レッシグ教授のプレゼンテーション
 米国は多くの戦争を戦っているが、MPAA会長のジャック・ヴァレンティ(Jack Valenti)が言うところの戦争とは、著作権に関する戦争のことである。それは、大手メディア企業がビジネスモデルを守るための戦争である。

 コミュニケ-ションには、トップダウン・企業中心・中央集権的なソビエト型(Soviet-speech)と、ボトムアップ・アマチュア中心・分散的なボトムアップ型(bottom-up speech)の2種類がある。ボトムアップ型のコミュニケーションを促進することは、民主主義を後押しし、経済的にも発展していくことにつながるが、もし抑圧すれば、そのポテンシャルが失われることになる。「自由な文化」(free culture)とは、民主主義を後押しし、経済を発展させるものである。

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(ここら辺は、レッシグ教授の最新書『Free Culture: How Big Media Uses Technology and the Law to Lock Down Culture and Control Creativity』からでしょうか)

 著作権法は、作者の創造性を支援し、作者の威厳を保つためにも重要なものであり、技術の変化により著作権法を含んだ法律も変化すべきである。しかし、いま起こっているのはその逆で、技術を19世紀の法律に無理に合わせようとしている。これはおかしい。

 現在、CCを通して起きていることは、アクティビズムである。たとえば、Colin Mutchlerは、Opsound(CCライセンスを導入しているレコードレーベル、誰でもCCかライセンスフリーのコンテンツをアップロードできる)で「My Life」というシンプルなギター・トラックをリリースしているが、Cora Bethはそのギター・トラックにバイオリンの演奏を加えて「My Life Changed」という曲を作った。こうしたコラボレーションに、弁護士は必要ない。米国の場合、大企業の利益追従の姿勢があまりにも強いので、「自由な文化」を主張する必要があるのだ。


■レッシグ教授・山形さん・Joiさんのパネルディスカッション
(敬称略)

山形:CCライセンスは、なぜ日本向けに移植することが必要なのでしょうか?

レッシグ :法律的なものと、法律的ではないものと、2つ理由があります。たとえば、日本では肖像権が強いなどの違いがあるので、その部分での修正が必要になります。しかし、より重要な理由は法律的なものではありません。パブリックドメインや自由なコンテンツを流通させるというムーブメントを拡大するために、米国主導で行くべきではないという考えからです。もちろん、ほかの国で作られたCCライセンスが、米国に逆輸入されることも歓迎します。

Joi:現在、アフリカでも彼らの文化をどうやって広めていくかを真剣に考えています。文化大臣と話したときに、CCライセンスで音楽を公開することにより、まず彼らの音楽を知ってもらうことを進めました。文化共有は重要という意識が生まれています。

山形:アフリカは国家レベルでやっているということですか?

Joi:これからです。

山形:日本では、コンテンツ大国を目指して著作権を強化する方向に動いていますが、産業育成とCCライセンスはどう関係しているのでしょうか?

レッシグ:米国の現行の著作権法では、作者に利益が入るという本来の目的は達成されていません。とくにインターネットと親和性のある著作権法の改正案などは、大企業の意向で潰されてきました。米国では、パブリッシャーと作者との戦いがあります。RIAAやMPAAは、別に作者を代表し作者を保護しようとしているのではなく、企業(パブリッシャー)を代表しているのです。

Joi:著作権を強化して守ることよりも、まずは有名になることのほうが大事です。コピープロテクト技術を使ったコンテンツが大量に出ていますが、コピーがしづらいものは、データも壊れやすいし、動かしにくい。だから、みんな使わなくなっていきます。それと対極的にあるのはブログのような自由にリンクをしたり引用できるものです。編集しやすいものが広がり、発展していくのです。

レッシグ:アーティストはサンプリングCCなどに積極的に反応します。米国のDJで、サンプリングCCベースで音楽をリリースしようとして、レーベルから反対された人がいます。コマーシャルユースだったらお金を払うとか、緩やかなルール作りが必要です。

山形:CCライセンスで登録するとき、 選択肢がいろいろあって悩むのですが、たとえば日本の著作権法にもとづいたCCと、一般のCCをがあるけど、どちらを入れるといいのでしょうか?

レッシグ:日本にいる人は、日本法に準拠したライセンスを選択したほうがいいでしょう。

山形:RDFを入れるときは、どこまできちんと入れるといいのでしょうか?

Joi:CCライセンスのみを検索できるようにするなどの目的があるので、RDFをきちんと入力することは重要です。ポストごと、もしくは写真ごとに入れられるようにするのが理想ですが。技術的に、そこら辺はいま考えています。

山形:日本でもフリーテキストを提供している人は大勢います。やっている側からすれば、ウェブサイトに明記するだけで十分だと思っていたけど、合法的なものにするにはそんな複雑なことが必要なのでしょうか?逆に、CCライセンスがあることで敷居が高くなってしまうことは?

レッシグ:確かに、複雑すぎるという指摘は理解できます。しかし、現行の法律に準拠した形だと単純化するのは難しい。ですから、ユーザー側にとって導入するのを簡単にする努力をしています。アドビのPDFやフォトショップなど、CCライセンスに対応していますし、「モーフィアス」でもCCライセンスのコンテンツが表示されるようになっています。NTTのサービス(「Digital Commons」のこと?)も発表間近ですし、MovableTypeなどのブログツールでも、CCライセンスにしたいかどうかを選ぶだけでいい。90%のユーザーは心配しないでいいようにしていく予定です。

Joi:なぜリーガルの部分が重要かという点で、ビジネス的な観点から言うと、個人のブログのコンテンツを大量にアグリゲートしてサービスを展開する企業がすでにいくつも存在しているからです。たとえば、ブログから本のレビュー、今日のニュースをアグリゲートしたい場合に、ブログの情報をトップページに出しても訴えられないことが保証されないと、投資家は怖がるんです。ものすごく大量のコンテンツを集めてお金が動くので、リーガルな部分は必要になります。

山形:米国で、CCライセンスを使ったコンテンツに関して、問題点は出てきていますか?

レッシグ:当初、多くの反対があったわりには問題はあまり出ていません。議論が単純化され、私自身もコミュニストと呼ばれて批判されたことがあります。私の仕事は弁護士を養成するものなので、IPという概念自体には反対はしていないのですが、「IPマッカーシズム」には反対です。現在ではMPAAの ジャック・ヴァレンティ、RIAAのヒラリー・ローゼンもCCのことを承認していますし、ジョン・ペリー・バ-ロー(John Perry Barlow)もCCに賛成してくれています。フランス、ドイツ、英国などでは、米国よりもよりオープンに受け止めてくれています。

Joi:レコード業界には、怠け者のトップが多い。ミュージシャンはサンプリングOKだけど、レーベルは駄目というのがよくあるパターンです。米国では、レコード会社の社長の半分は弁護士なんですね。アーティストを育てようと思っている人たちは、トップレベルではあまりいません。

レッシグ:たとえば、出版ではコリー・ドクトロー(Cory Doctorow) の本はCCライセンスで流通していますし、書籍でも販売されています。逆にCCベースでオープンにしたほうが話題を呼んで本が売れています。レコード業界はそれは馬鹿げた考えだと思っていますが、成功例が出れば、よりオープンになるでしょう。

Joi:アマゾン・コムの全文検索もその好例ですが、多くのウェブサイトやブログで引用してもらうほうが、リンクがたくさん貼られて、結果的には販売につながります。でも出版社がアホでいやがってる人が多いですね。オンラインで出したほうが本が売れるのに。

Y:あと、日本ではCCに関して様々な疑問が出ているのですが、たとえば、「コラボレーションは起きていないんだけど?起きたにしても、マイナーなものでは?」という疑問があります。

レッシグ:米国ではこれまでカウチポテト型でコンテンツを消費するというスタイルが主流だったのですが、自分たちでコンテンツを作る人々が増えています。全体の何%かという議論は重要なポイントではなく、CCのようなシステムを使ってコラボレーションをうながせば、その動きが広がっていくと思います。米国の場合は、CCライセンスでコンテンツを発表することは、「私は体制側ではありません」(I'm not a part of the system)と宣言しているのと同じものになります。

山形:ほかにも、著作権システムを変えることに関してのインセンティブがそこまで見当たらないのではないかという意見があります。

レッシグ:確かに、GPLのものをCCライセンスに変えるメリットはないかもしれません。でも、写真や翻訳などで、コラボレーションが生まれる可能性のあるものはたくさんあります。

Joi:スタンダードが1つにならないと動かない部分があります。日本では難しいかもしれないけど、アドビや検索エンジンなどのツール開発者に説得し、共通のライセンスにしていくことを目指しています。それがバラバラのライセンスだと難しい。

Y:CCをつけるということは、著作権法が強いということの証明になるのではないでしょうか?

レッシグ:実際に強いです。現行の著作権法は、インターネット向けに作られたものではありません。旧態依然とした、弁護士のための法律であり、「子供たちはコンテンツを盗むべきか否か」という議論がデフォルトなのです。ですから、CCは根本から著作権法のことを考えてもらうきっかけになると思います。35年前は、CCのような考えは必要ありませんでした。それは、そこまで著作権法が厳しくなかったからです。しかし現在、たとえばパブリックエネミーなどは1991年にリリースしたアルバムのサンプリング問題で、いまだにもめています。こういう問題があるので、著作権システムを変える必要があるのです。法律自体が理想的なものになれば、CCは必要なくなると思います。

Joi:現在、とくにコンテンツの利用に関して何も書かれていない場合はどうするかという「デフォルトの使い方」は、ネット社会のなかで形成されていますが、やはり勝手に引用されるのを嫌がる人もいるし、新しくネットを始める人も多いので個人差があります。そこで、CCのように著作権をアイコンで意思表示できるシステムがあれば、著作権のことを考えていない人でも、考えるきっかけになると思います。いまのCCライセンスがすべてだとは思っていないし、逆に日本のアーティストからも、こんなCCライセンスがあればいいというアイデアが欲しいです。



■Digital Commons
ここに詳しいです。

 NTTのサービスですが、大々的にはプロモーションなどは行わず、レッシグ教授の記事をNTTの機関誌(NTTテクノロジーズ?)で掲載するくらいだと担当者の南憲一さんはおっしゃっていました。


■質疑応答
山形:デジタルコモンズで、作品の親子関係(リンク)が見えるのは、自動的に見えるのか?

南(NTT):マニュアルです。電子透かしは画像と動画のみで、コンテンツIDに関しては、コンテンツIDセンターに準拠したもの。

山形:人の作品を持ってきて登録することもできる。混乱がおきるのでは?

レッシグ:MP3ファイルもそうだし、著作権侵害の問題はすべてのウェブサイトにもあてはまる。

山形:不当なコンテンツを見つけたらたれ込みする。それはワークする?

レッシグ:する。

八田:既存のコンテンツをCCベースにしたいのか?それともこれからできるコンテンツをCCベースにしたいのか?

レッシグ:ティム・オライリーは、自分の本をCCベースでリリースすることにした。だが、FOXスタジオは自社のコンテンツをCCベースではリリースしないだろう。しかし、CCベースのコンテンツが増えることで、大手メディア企業へも影響を与える。これは、フリーソフトウェアと同じ目的だ。

Joi:アーティストはコンテンツを外に出てほしいと思っている。ただレコード会社の法務部がいやだと言っている。じゃあ会社を変えようか、という動きも起きている。ペプシの広告でも、コンテンツを盗み、犯罪者呼ばわりされる若者がかっこいいという切り口を見せているのは、それだけ業界の締め付けが厳しいと感じている若者の共感を呼ぶからだ。もともと反体制な感覚を持つロックファンに、レーベルの姿勢は逆効果だ。

レッシグ:成功するビジネスモデルは誰も分かっていないけど、競争は重要だということは分かっている。サンプリング・ライセンスは、日本の同人誌と同じように、NegativeLandやジオ(?ブラジルの有名ボサノバ・アーティスト)はCCベースでリリースしたいと言っているが、レコード会社はNoと言った。これは間違っている。アーティストは選択できるべきだ。これについては、WSJに記事が掲載された。

Joi:たとえば、以前は音楽や映画に支払われていたお金は、現在はケータイに流れている。娯楽はよりコンテクスト中心になりつつある。たとえば、多くの人がブログを書くのは、別にお金が欲しいからではない。お金がもらえなくても何かを作りたい人、ベースはそこから始まるんじゃないか。

山形:すべてCCベースにする必要はないだろう。

Q:CCにより、さらに創造を生み出すと仮定すれば、オタク文化にCCがプラスになるとすると、コンテンツを持っている人にCCをいかに浸透させるか。踊る大走査線のように、ファンの活動が大きく成功した。ポケモンの同人誌が作った人が逮捕されたこともあったので、既存のコンテンツ会社に啓蒙することが必要なのでは?

レッシグ:同人誌がなぜ日本で浸透したのか?十分な弁護士がいなかったからと日本人の同僚から聞いた。英国では、BBCはCCベースのコンテンツにすることを決定した。ch4では、CCベースでビデオをDLしてミックスしてもいい。逆に注目を集めることができるからだ。社会が自由であればあるほど、長期的には閉鎖的な社会よりも成功するというのを信じている。

Joi:英国の漫画家で、CCを使って知名度を上げて、名刺やポスターを販売している人がいる。
イラク戦争のニュースの4%はブログを通して読まれたという調査もあるように、個人のサイトの重要度が高まりつつある。

Q:デジタル・コモンズのサービスは、有償か無償か?

南:無償です。OCNなどでBBへ移行したほうがいいよ、というプロモーションの一環として使う。商用コンテンツと、普通のコンテンツのバランスを取りたいためのプロジェクトであり、これで大きく利益を出すことは考えていない。

Q:日本と米国では著作権の厳しさが違うのでは?日本では必要性に欠ける?

レッシグ:米国は、厳しい著作権システムを他国にも導入させようとしている。

Joi:ロースクールができて、ネットビジネスだととくに米国と合わせる必要があるので、日本もプレッシャーを受けつつある。CCはその予防線のようなもの。

Q:「プログラミングは料理のレシピのようなものだ」というリチャード・ストールマンの話に感銘を受け、いつか私も社会に貢献したいと思っていた。現在、モーションキャプチャを使った3Dコンテンツを作っているが、CCベースで3,000くらい公開したい。CCはソフトのファイルフォーマットに影響を受けないのか?

レッシグ:コンテンツかソフトウェアかの違いは微妙になっている。ソフトウェア用ライセンスには「GNU GPL」という完璧なものがあるので、それを使えばいいが、3Dやフラッシュ・ファイルはどうなのか?また、3D向けに最適なライセンスモデルも、日本でそういったライセンスが出てくれば、CCのレパートリーに加えることができるのでぜひ考えてほしい。

Q:DRMに反対しているはずのCCだけど、DREは導入してもいいのか?

レッシグ:私はDRMはクロスプラットフォーム性を破壊する仕組みだと考えているので、反対している。DRM技術が導入される以前は、人間がフェアユースかどうかを決定していた。そこにはまだ裁量があった。しかし、技術がそれを決定してしまうと裁量がなくなってしまう。さらに、DMCA以降、DRMに関して議論すること自体が非合法になってしまった。すべてのデータに対して自動的にDRMが使われるようにならないためにも、DREの導入は必要。

Posted by hiroko at March 20, 2004 11:54 PM | TrackBack
Comments

>NegativeLandやジオ(?ブラジルの有名ボサノバ・アーティスト)はCCベースで

ジルベルト・ジルのことを言っているのではないかと思います。ブラジルの現文部大臣,兼MPB(ブラジルポップミュージック)の代表的人物です。

Posted by: token at March 22, 2004 12:44 AM

あ、その人です。どうもありがとうございます!

レッシグ教授が、ジルの家を訪れたときの話を夕食の席でしていました。海の見える美しい家で、なかに入るとジルがリビングルームの床に座り、静かにギターを弾いていたそうです。レッシグ教授がCCの概念をお話している間、ジルはそのままギターをつまびきながら話を聞き、話終えるとギターを弾く手を止めて、「I love it!」と言ったそうです。

その話を聞いて、ブラジルに行きたくなりました。

Posted by: hiroko at March 22, 2004 09:35 PM

ジルと同じことを、違う人(例えば僕)がやったとしたら「おい!人の話しちゃんと聞けよ!」となるのでしょうか(笑)。

Posted by: FlowerLounge at March 25, 2004 01:26 AM

あはは、なるかも(?)
でもお琴とか篳篥だったら聞き入ってくれるかもです。

Posted by: hiroko at March 25, 2004 11:57 AM

CCライセンスのコンテンツを検索できるサイトです。
http://search.creativecommons.org/

Posted by: mayu at March 30, 2004 11:17 AM

Free CultureがなんとすでにMP3で聴けるようになりました。たくさんの人たちが参加して各Chapterを読んでレコーディングしたそうです。聴くのも楽しそうですね。
http://www.turnstyle.org/FreeCulture/

Posted by: gt at April 7, 2004 02:49 AM

おお〜!すごい。まさにCCならではのアイデアですね。iPodでFree Cultureを聴くなんていいかも。

Posted by: hiroko at April 7, 2004 10:29 AM
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