イラクでの邦人人質3人のニュースに関して、私のところにも自衛隊の撤退を呼びかける署名集めなど多数のメールが来た。一刻も早く3人が解放されてほしいと思う反面、今回の件にはどことなく違和感を感じ、悪いと思いつつも署名できなかった。それは、彼らがたとえ崇高な目的があったとしても、なぜきわめて危険な状態であるこの時期にイラク入りしたのかが、よく理解できなかったからだ。
続きを読む↓
「日本人はテロの対象」だとテロリストグループにより表明された折、ファルージャでの戦闘も悪化しており、日本政府は渡航制限と避難勧告を出していた。アンマンのホテルで働く現地の人も、彼らのイラク行きを真剣に止めたが、それを押し切って彼らはイラク入りした。こうした状況を考えると、3人の行動は自己責任であり、日本政府や自衛隊がその責任を取る必要なないのではないだろうか。また、武装グループによる要求を安易に受け入れることは、現在のイラクの治安から考えて、同じような事件を増加させる原因を作ってしまうことにもなるだろう。
しかし、「自衛隊を派遣したことで、日本は米国との同盟関係をことさらアピールし、イラクに敵対した。その結果、武装グループが邦人3人を拘束した。だから、責任は日本政府にあり、政府は人質解放のために自衛隊を撤退させるべきだ」という意見もある。確かに、自衛隊の派遣という「顔の見える支援」により、イラク人の間に反日感情が高まったことは事実だろう。だが、日本は以前から米国と強い友好関係を持ち、10年前の湾岸イラク戦争でも多額の資金を米国に援助していた。その資金はイラク人を殺すために使われており、日本は自衛隊を派遣するずっと前から、イラクの敵だったのだ。
もし、日本がイラクの敵だと思われたくないなら、日本政府は、「米国がイラクの大量殺戮兵器の証拠を見つけられないのは遺憾である」くらいの声明を出すべきだと思う。そして、さらに言えば、テロリスト達から見れば、私たちの豊かな生活・文化、価値観自体がすでに悪だったのかもしれない。自衛隊をたとえ撤退させたとしても、テロの温床になる貧困や抑圧がそこら中にころがっているなかで、豊かなライフスタイルを続けることは、それだけでリスクになる。今回拘束された邦人3人も、常日頃こうした疑問を抱いている人々だったのではないだろうか。
NPOや市民活動家の間でも意見は二分していて、「人命救助が先決」、「いや、彼らは避難勧告を無視してイラク入りしたので当然の帰結」といった議論がなされている。11日に武装グループがいったん人質を解放するという旨の発表を行った際、すぐにNPO関係者の間では「署名を集めたり、現地の宗教リーダーやテレビ局への働きかけを行った市民の声が、武装グループの心を動かした」と喜びのメールが飛び交った。しかし、その一方で、日本政府の動き、米国側の圧力、その他の交渉人や仲介人の水面下の動きには一切言及されておらず、逆に政府批判が多かった。
今回の件では、こうした政府側と一部のNPOの対立的な構図がなんとなく浮かび上がったような気がする。命の危険を犯してまで、高遠菜穂子さんと今井紀明さんがバグダッド入りしたのは、ストリートチルドレンを助けるため、または劣化ウラン弾を処理するためなど、人道的支援を行うためだった。一方、自衛隊は、なぜイラク入りしたのか?破壊された電気や水道のパイプラインを修理し、壊れかけた病院に医療設備を運んだり、食料援助をしたりという、イラクの復興支援・人道的援助のためである。背景や立場の違いがあるにせよ、高遠さんも今井さんも自衛隊も、イラク人を助けるためにイラクにいるのである。彼らの目的は同じだった。
だから、今回の事件で自衛隊の活動が制限されてしまい、イラク人への緊急支援が滞ることは、彼らにとっても不本意なことだったのではないだろうか?日本人外交官をはじめ、CNNのジャーナリストやイギリス、ドイツ、アメリカの民間人などが無差別に殺害されるきわめて危険な状態で、それでも彼ら3人はイラクに行かずにはいられない、強い想いがあった。その想いが人質となって政治的な駆け引きに利用されてしまうのは何とも言えず、やりきれない思いである。
知り合いのメールから:
(quote)
じっさい、イラクには、具体的に保健衛生上の理由で死んでいる子供がたくさんいるはず。それに対する、支援。まずは緊急支援。おそらく次の段階ではインフラの復興支援。それを支援したいという国民が
現れ、国民の総意として支援を決意したとき、どうなるのでしょう?
もちろん、第一に、現地での戦争状態を脱しなければ、支援の効果が薄まるので(ゴンベが種まきゃ、カラスがつっつく!? そんなおだやかじゃないか)、タイミングの問題があります。(もしかして、現時点を、戦争状態は終結していると判断して、つまり米国の発表にしたがって、復興に参加することが、米国に対する追従ととらえるのかな?何を持って、追従なのでしょう?外国ではそうとらえれている、という以上に、どこかポイントがあるはず。)
それ以上に、軍隊派遣の選択です。保健衛生面のサポートが、たとえば、あるNGOが、自衛隊の半額の価格で提供できる場合、そしてその効果も、はるかに上回っている場合、通常の市場だったら、そのNGOにこの復興サービスを委託する。
ところが、このイラクの場合、通常の市場の外部性が強く、通常のコスト以上に、ポリティカルリスクがかかります。つまり、危険ですね。そのとき、1)NGOプラス護衛の兵士がつく?、2)ポリティカルリスクを鑑みると、軍隊の保健衛生部隊を送った方が、最終的にはコストが抑えられる(民間NGOが政府の請負で現地へ行って、殺されたらそれこそ処理がたいへん)。
だから、2)の軍隊の派遣になるのかな?
それとも、日本の場合どのみち、軍隊が反撃できない?ので、おんなじだから、それなら「わたしたちはイラクの友ですよ!」(でた!)と笑いながら、NGOのみで活動する?丸腰でいきますか? うむむ。
えーと、つまり、いいたいのは、イラクが戦争状態おわるまでは、イラク国内がどんな状況であろうとも、まあ勝手に米国が戦争しているんだし、あぶないし、国としては支援はできない、というものなのか。そんで、「民間NGOのみなさん、政府がうごけないニッチなので頼みます。リスクはとってね?」
もしくは、軍隊の派遣という形を取らず、NGO(もしくは民間企業、、だけどちょっと考えにくい)に委託することができるのか?(丸腰もしくは、やっぱりよその軍隊に守らせる?もしくは、イラク人の武装部隊と提携して、彼らに守ってもらうか?!)
逆に、国として対応して、しかも軍隊の土木部隊や保健部隊を派遣したら、ほんとうにそれが、そのまま対米追従になるのか?
日本の場合、問われているのはコミュニケーション能力ではないとおもいます。真意であり、志というか、何をしに、どういう意志で、じっさい、イラクに来たのか。ほんとうに思っていることです。(これは、軍隊の派遣そのものが、実は憲法9条の問題ではないことと同じ。「9条があるから送れない」は海外ではとうぜん、通用しないロジック。憲法は変えればいいのだから。自分のコントロールできることだもん。問われているのは、要は、「あなたたち、軍隊を送りたいの?送りたくないの?」。9条を持ち出すのは、軍隊を送りたくないから?)
(snip)
どっかの平和好き市民運動が言うような、きれいな言葉ならべるのいやですが、じっさいに、緊急援助へのさしせまったニーズがあることは、想像にかたくないのです。
(/quote)
Posted by: hiroko at April 14, 2004 11:25 AMそういう問題なのかしら。
自衛隊を派遣して右派の票を得たい政府と、実績を積んで名前をあげたい個人活動家の対立ということでしょう。
どちらも援助という点では無力であって、具体的に市民を助けられるわけないですよね。どちらを支持するかは政治的な問題でしょう。
後者の人々は、危険を乗り越えて現地入りすることで、戦争反対する政治的な力を得て、それで戦争をとめることにこそ意義があるのだと思います。
今回の人質事件の始まりから解放まで見てくると、政府側と一部のNPOの対立的な構図というのはとても明らかになったと思います。なぜなら、日本政府からの発言では常にNGOや個人の活動に対して冷たい態度を示すものがありましたから。
まず8日の事件発生後すぐの福田内閣官房長官の発言では「3人はイラクに何かマイナスなことをしましたか? 違うでしょう」とあり、10日の川口外務大臣のイラクへ向けての声明では3人の活動内容には触れず"The people of Japan and I strongly demand an immediate and safe release of the three hostages."(AlJazeera)と呼びかけただけです。そして解放後の16日、小泉総理大臣は「3人の中にはイラクで活動を続けたいという人もいるが?」という報道の質問に対して「これだけ多くの政府の人たちが浸食を忘れて努力しているのに、なおかつそんなことを言うのか、自覚を持っていただきたい(NHKテロップ)」と明らかに不快感を示し、川口外務大臣は衆院で「イラクへの渡航はいかなる理由であれ絶対に差し控えるよう促してきた、この種の事件が再発しないよう国民のみなさんは勧告に従ってほしい(NHKテロップ)」とスピーチしました。これらを総合すれば、聞こえてくるのは「日本政府はNGOと個人が勝手にイラクで活動するのは不快だから、政府に従いなさい」というメッセージでしょう。
でもここで、ちょっと感情的な視点とは離れて、今回の日本政府の一連の発言を情報戦として見ると、とてもお粗末です。なぜなら、もし日本政府が「自衛隊の派遣は人道支援のためだ」というメッセージをイラクとアラブ圏に送るつもりなら、今回の人質事件はそれを伝える絶好のチャンスだったはずです。「人質になっている3人のように、日本には個人にすら人道支援をしようとする遺志がある。だから国としても自衛隊を送り支援しているのだ」というロジックが使えたはずです。
しかしAljazeeraのニュースでは、3人の活動内容や目的についての詳しい説明は家族からの発言としてであり、日本政府は早く解放することを望んでいるといっただけです。
この記事↓の中の日本政府の声明を扱った部分の小ささは特筆すべきものでしょう。
http://english.aljazeera.net/NR/exeres/F4DBDBF6-B2E6-4DFA-9F23-66FC66DD8FC4.htm
このため結果としてアラブ圏に送られたメッセージは「日本は人道支援のために自衛隊を送っているが、人道支援するNGOと個人は無関係だ」というものになっています。これをイラクの人たちから見れば、一番身近なところに来ているNGOと個人を日本政府は認めず、武装して基地に立てこもっている自衛隊のみが日本政府の正式支援だ、と捉えられるでしょう。これでは「日本は占領軍の同盟国でしかない」というイラクの人たちの誤解を解くことはできないのではないでしょうか。
あるいは、日本政府の送りたかったメッセージは実は「日本はアメリカの同盟国だ」ということかもしれないですが。しかしそれでは、今後も日本人は反アメリカの武装グループからターゲットにされ続けるだけでしょう。
3人が解放された同じ日、オサマ・ビンラディンは「ヨーロッパに対しては停戦してもよい。ただしアメリカとスペインとイスラエルは別だ」というメッセージを流しています。便乗した情報戦のタイミングとしてはあちらの方が一枚上手のようです。
三茶ぶらぶら日記さんからのメールです。
http://siopy.cocolog-nifty.com/sancha/
人質事件について。
ネット上では自作自演説が流布しています。
さらに犯人側と聖職者協会のマッチポンプ説も。
http://www.zakzak.co.jp/top/2004_04/t2004041932.html
僕はこちらの方がかなり説得力があると思っています。
まずは、犯人=聖職者協会が影響力拡大のために誘拐事件を起こす。
捕まった3人は、すぐ犯人の意図を理解し、この機に乗じて
自分たちの主張である「自衛隊撤退」を犯行声明に載せるシナリオを
一緒に書く。
#自衛隊撤退の世論が巻き起こると予想していたのでしょう。
日本国内では予想とは逆に「自己責任論」が巻き起こり、撤退論は立ち消えた。
しかし、犯人側としては自分たちの影響力拡大ができればいいので、
(多少遅れたものの)身代金を受け取り、予定通り聖職者協会を通じて開放。
人質たちはPTSDということで、当面隠遁生活をして時間を稼ぎ、
後で「おどされてしかたなくビデオを貸して、CDに焼いた」と証言し、
自作自演説を否定。
という感じ。
この考え方が正しいか間違っているかはわかりませんが、
当初の被害者家族が主張していた
「自衛隊撤退」
も、その後の世論が
「完全自己責任論」
に傾いたのも、物事を一面からしか見ようとしない、日本人の悪い癖だと
思います。
家族の主張は「自己責任」を全く無視していて、あまりに虫がいいし、
逆に世論の方も全ての責任を人質に押しつけようとする点で、逆に
幼稚な考えではあります。
被害者家族が自衛隊撤退を主張したら何がいけないんでしょう?
関係ない人が主張するならともかく、家族なら当然の行動だと思いますけど。
家族を助けようとしたらいけない国なのね、ここは。
邦人人質事件に関して米国在住の友人からメールが来ました。そこまで大々的には報道されていないとのことでした。
(quote)
アメリカ人も人質に取られているのでそっちの方が大変ですね。あとはプライベート・コントラクターとしてセキュリティガードをしているアメリカ人たちが行方不明になったりしてそちらのほうで経済的にも影響が出ています。プライベート・コントラクターの業界はすごく大きくなっていたようで、需要はあるものの、この事件によって供給が伴わなくなったようです。
(/quote)
Academia e-Network Project という大学教授など有志が「イラクで人質になった方々への敬意表明と激励の緊急アピール」の署名活動を始めたという話題を坂本龍一さんがFwdしています。
In English:
http://ac-net.org/honor/honor-appeal-en.php