○ニュース&レビュー海外編
(NIKKEI NET ITニュースメール 8/24/2004掲載)
先週はグーグルのIPOが大きな話題になった。初日の取引が18%上昇して終了し大成功を収めたグ−グルは、現在も株価が上昇を続けている。果たして、過去3年間低迷していたIPO市場を後押しする力となるのだろうか。今回は、グーグルのIPOの動き、全体的なIPO市場のトレンドを取り上げた。また、日本ではファイル交換ソフト「Winny」作者の逮捕が現在も波紋を広げているが、米国ではファイル交換サービスの「モーフィアス」と「グロックスター」が合法であるという判断が下された。9月1日に開かれるWinny作者の初公判を目前に控え、今回の米控訴裁判所の判決がWinny裁判に何らかのいい影響を与える可能性に期待したい。(長野弘子/ITジャーナリスト)
■グーグルのIPO、初日で18%上昇(8/20 San Jose Mercury News)
米グーグルは19日、NASDAQ市場で待望のIPOを果たした。同社はIPOの直前に公募価格を「108〜135ドル」から「85〜95ドル」に引き下げており、100.01ドルで取引開始したグーグル株(ティッカーシンボル:GOOG)は18%上昇し100.33ドルで終了。出来高は2200万株だった。
IPO株の公募に入札方式を採用するなど、前例のないIPOを行ったこともあり、公募価格の直前の変更や、売却株式数を2570万株から1960万株に減らすなどの混乱もあった。その結果、2人の創業者を含むグーグル幹部がIPO売却株式数を半分に削減し、グーグルの初期投資家であるセコイヤ・キャピタルのマイク・モーリッツ氏、KPCB(クライナーパーキンス・コーフィールド&バイヤーズ)のジョン・ドアー氏は、それぞれ240万株、210万株の株売却を見送ることになった。また同社は、未登録の株式を従業員やコンサルタントなどに発行したことが米証券法に違反する可能性があるとして、これらの株式を2590万ドルで買い戻す必要があることも明らかにした。
IPOをめぐる騒動による同社のイメージ低下を懸念するアナリストもいたが、現在グーグル株は上昇を続けており、今後のIPO市場全体にも好影響を与えることが期待される。
■米国のIPO市場は復活したか?(8/20 Siliconvalley.com)
グーグルのIPOの成功を受け、米国のIPO市場の回復が期待されているが、この数カ月間は市況の悪化からIPOの中止や延期を発表する企業が増えている。IPO申請していたリンドウズは、8月に入り公開価格を当初の9〜11ドルから5〜7ドルへと引き下げ、18日にはIPO自体の延期を発表した。ほかにもイーコスト、ウェブサイドストーリーがIPO公開価格を大幅に引き下げ、マッチネットはIPOの見送りを決定。IPO情報サイト「IPOホーム」(IPOhome.com)によると、この1カ月で13社の企業がIPOを延期することにしたという。
金利の引き上げ懸念、イラク情勢による石油価格の上昇といった市況の先行き不安感から、IPOを踏みとどまる企業はさらに増える可能性がある。さらに、大統領選挙で民主党のケリー候補が当選した場合、増税が経済回復の障害になりうると予想されている。しかし、今年IPOを果たした企業はグーグルで123社目となり、すでに2001年の83社、2002年の70社、2003年の68社を大きく上回っている。IPOによる資金調達額も255億ドルに達しており、2002年の240億ドル、2003年の150億ドルを超え、米国経済は現在ゆるやかながらも回復基調に向かっていると言えるだろう。
■米控訴裁、ファイル交換サービスは合法と裁定(8/19 Wired News)
米連邦控訴裁判所は19日、ファイル交換サービスの「モーフィアス」と「グロックスター」は合法であり、ユーザーの違法行為に対する責任は問われないという判断を下した。昨年4月の連邦地方裁判所の判断を引き継ぐ形となる。全米レコード工業会(RIAA)とアメリカ映画協会(MPAA)は、ファイル交換サービスにより著作権つきの音楽や映画が大量に交換され、売り上げに大きな損害が出ているという主張を繰り返しており、地裁判決を不服として上告、今年2月に控訴裁で口頭弁論が行なわれていた。
今回の判決では、海賊行為に使われる可能性のある技術であっても、相当量の正当な利用が認められる限り、その技術を禁ずることはできないとされた。2000年にはナップスターに対して裁判所の停止命令が出ているが、ナップスターがファイルのインデックスを自社の中央サーバーで管理しているのに対して、モーフィアスやグロックスターには中央サーバーが存在しない点で異なるとしている。ソフトウエア開発者にとっては妥当な判決であり、日本のファイル交換ソフト「Winny」をめぐる裁判の行方が今後は注目される。