August 27, 2004

監視カメラで犯罪は減少するか?

 今日の朝日新聞に「街頭防犯カメラが犯行生中継、約10分後に逮捕 渋谷」という記事が掲載されていた。一見、渋谷の街に防犯カメラを設置したことで、犯罪検挙率のアップにつながったという印象を受ける記事だが、よくよく読んでみると、防犯カメラが犯罪防止に役立っているどころか、カメラを設置してからも犯罪は減るどころか逆に増えているという事実が分かる。

 同署によると、今回のように泥酔して寝込んだ人から金品を盗む犯行は渋谷区内で1〜8月、98件発生。うち80件はここ約2カ月間に集中的に起きており、「センター街やハチ公前など頻発している場所を警戒中だった」という。

 警視庁の防犯カメラは3月、渋谷駅前交差点やセンター街などに計10カ所設置された。ドーム形で、左右360度、上下180度まで広角撮影ができ、ズームの倍率は22倍、約50メートル先の人物まで認識する性能を誇る。

 これまでにもセンター街では大麻や覚せい剤などの薬物を売買する場面や恐喝、ひったくりなど計8件の犯行をとらえ、検挙に貢献した実績があるという。

 防犯カメラを渋谷に設置したのが3月、渋谷区内での犯行は1〜8月で98件発生し、そのうち80件が7〜8月に発生したとのこと。で、防犯カメラにより検挙につながったケースがたった8件。この数字を多いと思うか少ないと思うかは人によるが、防犯カメラを設置したから犯罪が減ったり検挙率が上がったりすると考えるのは短絡的だろう。「犯罪増加率と流動性期待: NHKスペシャル『63億人の地図』より」に詳しく書かれているが、「監視カメラの抑止効果は限定的」だというのが現実だと思う。また、東浩紀さんがRSAカンファレンスで語ったように、監視カメラにより犯罪が減ったケースもあるが、だからといって監視カメラを置きさえすればいいと言うのではなく、「監視技術が必要な社会そのものが問題」だと問いかける必要があると思う。

 NY市で成功をおさめた「Broken Window Theory」ではないが、壊れた窓ガラスのある荒廃したビルや家を無くし、近所の人との挨拶を心がけるようにして犯罪が起きにくい雰囲気、環境を作っていかなければ、いくら街にカメラを設置しても犯罪は減らないだろう。

 監視カメラ万能主義に陥ると、面接室にまでカメラを入れて観察するような会社まで登場してしまう。そっちのほうが怖いと思うんだけど、、。

追記:犯罪発生マップなるものがあることを最近知った。渋谷区のマップを見てみると、やはり渋谷駅周辺に犯罪が集中している。こわ、、。日本に帰ってきてからしばらくはレストランやバーで席を立つにもバッグを肌身離さず持っていたので友人によく笑われていたが、日本でも用心しないと犯罪の被害にあってしまう時代になったんだなぁ。ましてや渋谷の道ばたで酔っぱらって寝てしまうなんてことは、犯罪多発地帯で犯罪のカモになりたいと言っているようなもの?私も用心しないと。:P

Posted by hiroko at August 27, 2004 11:50 PM | TrackBack
Comments

防犯カメラは、ある程度犯罪抑止に役立つだろうけど、現実のすべてを監視するのは不可能なのだから、完璧ではありえません。それよりも、長野さんの書いている通り、犯罪が起きにくい環境を作るのが大事かと。まずはコミュニティの再生からでしょうか。

Posted by: しおぴー at August 29, 2004 10:21 PM

監視カメラや監視ロボットを研究したり導入したりするのがトレンドなので、この傾向は当分続くんでしょうね。でも、膨大なデータの処理、個人情報漏えいのリスクを考える必要があると思います。

<ロボット>深夜の商店街を巡回警備 博多で実験
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040828-00000027-mai-soci

俊敏な動きと煙幕で不審者撃退——屋外対応「セコムロボットX」
http://www.itmedia.co.jp/lifestyle/articles/0407/22/news061.html?nc20

あと数年後には、近所のスーパーとかにも万引き防止ロボットが住むようになったりして。:P

Posted by: hiroko at August 30, 2004 11:26 AM

おっしゃるとおりだと思います。

同じ監視カメラでも「監視・記録」目的と「犯罪防止と救済」目的がありますが、現状、前者が犯罪防止に役立つとは思えないですよね。

知り合いの店が、常連さんに強く勧められて監視カメラを設置したんですが、却って「金目のものがある店」として危険にさらされるようになったそうです。監視カメラはあくまで検挙目的なので、設置イコール”盗難されたらまずいものがおいてある”ということを暗示していることになってしまいます・・・。

後者の犯罪防止とか救済目的のコミュニケーターは効果を発揮していて、子供や女性の安心度は増しています。ただ、これはセンター街などの繁華街では効果はなく、人気のない路地に限定されます。また、この装置は犯罪者のモチベーションを下げたり、犯罪そのものを回避する成果を出していますが、あくまで局所的な効果しかなく、この地域全体の犯罪発生率が下がっているというわけではありません。

ただ警察官の数が不足する状況が続いているので、カメラの効果を否定することはできないのですが、そういう意味ではブロークンウィンドウ理論など、社会工学的に犯罪を防止する方法が一番いいのではないかと思います。

ブロークンウィンドウ理論は、日本ではほとんど導入されていませんでした。

まず1998年頃から札幌市が違法駐車を完全検挙し繁華街の犯罪を激減させたという成果があります。また、宇都宮市いわき市で、自動車のライトを日中から点灯させることで、交通マナーを向上させる効果を上げています。昨年くらいから全国各所でブロークインウィンドウ関連の活動が始まっていますが、まだまだこれからのようです。

Posted by: maskin at August 31, 2004 11:42 AM

それでも設置しないよりましだとおもいます。もうそういう時代なのでは。

犯罪統計だって、なにが正しいのかわからないとおもっています。カメラが設置され、いままで見過ごされていた事件が検挙されるようになったら、設置→事故増加という「事実」ができあがってしまいます。自分の家族がもし事件に巻き込まれたとき、ぼくは防犯カメラに解決の望みをたくしますね。

少なくとも、渋谷はそういう町です。だからあんまり行かないけどね。

Posted by: I like the camera at September 1, 2004 12:33 AM

コンピューターセキュリティの分野で知られているBruce Schneierがセキュリティに必要とされる要素と常々言っている「prevention(防止), detection(検出), response(対応)」という3つのステップがありますけど、それに基づくと以下のように考えられると思います。

prevention: 「broken window theory」など、犯罪を起こしにくい環境を整備すること
detection: 監視員、監視カメラ、センサーなどによる犯罪の発見
response: 警官や警備員が現場に急行して対処すること

この見方で行くと、警備員の数を削減するためにカメラを設置するような計画は犯罪減少には効果がないと言えるでしょう。カメラの数を増やしてdetectionを強化しても現場に急行してresponseできる人員がいなければ、犯罪者はカメラを無視するようになるからです。極論するなら、100%に近いresponse率を実現するとしたら人口の半分が警官というような社会でないと不可能でしょう。犯罪はいつどこで起きるか判らないし人間1人取り押さえるには最低1人必要ですから。でもそういう社会は異常です。

現実問題としてresponse人員は危険度も高いから人手不足になるのは目に見えてる気がします。それで実際に警察官や警備員が不足してるとしたら、その部分をロボットで置き換えようとする傾向は当然出るのではないでしょうか。それにより監視と対応のリモート化が可能になり、少ない人員でも簡単な事件への対処ができる可能性はありそうですけど。

他にはdetectionがあることを宣伝するタイプのpreventionがあります。イギリスのBBCテレビでは、監視カメラの映像が残っていたことから検挙できた犯罪事件ばかり紹介する番組が、なぜか夕食後の団欒時間にあります。役者を使って事件の再現を行い同時にそのときのカメラ映像も組み合わせていました。しかしこれも実際のresponseの有効数が増えなければ効果が薄れるでしょう。

しかし今街に増えている監視カメラは誰が運用しているのか不明なものも多いですね。警察なのか、地域の警備会社なのか、地下鉄など交通機関なのか。さらに秋葉原ではここ5年くらいの間に、オーディオショップや無線ショップだったお店がどんどん監視カメラショップに変化してる傾向があります。なので個人がいくらでも監視カメラを買えるようになっています。こういう国は他にないのではないでしょうか。ACLUの知人が日本に来たときに連れて行ったらびっくりしてました。でも個人が設置してる場合は監視カメラはあってもresponseが期待できないです。

さらに今対処が難しくなって来てそうなのは、違った犯罪の質をどう扱うかということもありそうです。たぶん大部分の犯罪はビジネスです。この場合なら犯罪者も費用対投資効果を考えるので、それに基づいて防止計画がある程度作れるでしょう。しかし、怨恨に基づく犯罪は動機が違うし、池袋での通り魔や、またティーンエイジャーによるホームレスの人の暴行事件などには暴力による自己実現的な要素もありそうで、同じ対策が効果があるかどうかわからない気がします。犯罪防止には動機や社会背景に立ち戻って理解することがやはり重要ではないでしょうか。監視カメラだけで犯罪が減ると考えるのは短絡的だと思います。

そして、これら全部を俯瞰して問題になるのは「誰が監視者を監視してるのか?」というところでしょうね。監視者が秘密主義的、独占的行動を取ることを認められてしまうと、システム全体の悪用ができるようになりますから。かといって、ウェアラブル・カメラで知られるSteve Mannのいう「Sousveilance(逆サーベイランス)」思想だけでも対抗できないような気がしますけど...。
http://wearcam.org/sousveillance.htm

Posted by: gt at September 1, 2004 04:08 AM
Trackback
Post a comment









Remember personal info?