November 11, 2004

エコロジーとエコノミーの両立は可能か?

frantz.JPG
 11月9日、ドイツの環境ジャーナリスト、フランツ・アルトさんの講演会が行われた。テーマは「エコロジーとエコノミーの両立」ということで、環境にやさしい製品や社会の仕組みを作り、経済的にも潤っているヨーロッパの最新事例などを紹介した。フランツさんは、ドイツではテレビキャスターとして長年活躍してきた。そのなかで、環境ビジネスの最先端を見てきたため、科学者の視点ではなく、一般人の目で豊富な事例を紹介してくれて、分かりやすかった。

 印象に残ったのは、化石エネルギーは今後50年以内に枯渇することが確実視されており、一番大きな問題は、石油価格が高騰して、一般人の手に入るような代物ではなくなるということだった。いま起こっている石油の価格上昇を、このトレンドの兆候と見るか、戦争による一時的な現象と見るかは意見が分かれるが、価格高騰は10年以内に到来すると予測されている。再生可能エネルギーに移行しなければ、エネルギーの醜い奪い合いになるだろう。

講演の主旨:
1)世界は貧困に苦しみ、貧富の格差はますます広がっている。

2)先進国GDPの0.5%を使うだけで、世界の貧困問題は解決できる。
しかし、先進国はそれをやるつもりはまったくない。

3)貧困問題・エネルギー問題の解決には、第三世界の教育が不可欠になる。

4)太陽は、現在の人類が必要とするエネルギーの1万5000倍の
エネルギーを供給している。

5)再生可能エネルギーは、現在のエネルギー総消費量の2%に
すぎないが、2050年には60%にまで拡大すると予測されている。

6)エネルギー革命に対する社会の目覚めが必要だが、
報道・情報の少なさが問題。

7)再生可能エネルギーという新産業で、
EUでは500万人の雇用増加が期待されている。

8)バイオマス利用により、農家はエネルギー消費者から
生産者へと変貌を遂げる。

9)一般消費者がエネルギーを生産するエコ住宅により、
政府が電気料金を一般消費者に支払うようになる。

10)環境運動は暗いマイナーなイメージだったが、
太陽に象徴される美しいものになる。


 講演を聞いて、ヨーロッパでは確実に環境ビジネスが立ち上がっているのを実感した。また、日本も太陽光発電では世界でトップクラス、さらにハイブリットカーなどのエコ自動車の分野でもトップを走っており、日本の環境への取り組みに対して評価されているとのこと。

 しかし、日本政府は、京都議定書が来年2月に発効するにもかかわらず、新エネルギーRPS法により、風力市場は2003年度の33万KWから、2004年度は5万KWへと縮小。来年度はゼロKWになりかねないという。また、誰もが不要と思っている六ヶ所再処理工場へ最低11兆円をつぎ込むほか、経産省と環境省の確執から有効な政策がなかなか立ち上がっていない状況だという。

 環境エネルギー政策研究所の飯田哲也所長によると、つい先日も、ドイツのボンで、「自然エネルギー2004」という非常に重要な会議が開かれ、160を超える「国際行動プログラム」が提唱されたという。とくに、中国は2010年までに60GW(6000万KW)の自然エネルギーを拡大し、電源の10%をまかなうという新法案の導入を発表した。また、国連プロセスを補完するための新たな取り組み「地球政策ネットワーク」が開始された。そのなかで、日本政府の発言、存在感はほとんどなかったという。NGO関係者は、日本政府の対応に非常に不満を感じているようだ。

 フランツさんを招聘したThink The Earthのスタッフと話していたが、フランツさんは日本での講演のあと、12日からは台湾に行くそうだ。なんと台湾政府がフランツさんを環境政策のアドバイザーとして呼んだそうだ。台湾、中国ともに環境大国として評価される国づくりを目指そうとしているように見える。WorldChangingのAlex Steffenによると、上海は毎年GDPの3%の10億ドルを緑化に当てており、2010年に開催される上海万博までに、世界有数の自然環境都市にするそうだ。日本は環境分野でも、中国に先を越される日が近いのかもしれない。

続き↓

今日送られてきた、「小泉内閣メールマガジン 第163号」。ちょうど、京都議定書発効の話題だった。

 環境保護を進めると経済発展を阻害するという考え方があります。しかし、私はそうは思いません。

30年前、日本が高度成長を続けていたころ、国内では公害が大きな問題になっていました。当時は、環境保護に配慮すると余分なコストがかかると考えられていました。ところが、現在では、人々は、多少高くても、環境にやさしい製品を購入するようになりました。

環境保護と経済発展は両立するのです。そして、この二つを両立させる鍵が科学技術なのです。

11月14日の日曜日に、ちょうど京都の同じ会議場で、科学技術と社会に関する国際会議が開かれます。私もその会議に出席して講演し、「環境保護と経済発展は両立する。」という私の考えを世界のリーダーたちに訴えたいと思います。

 環境政策も、この言葉通りに先進的なものにしてほしいものだ。原子力発電がクリーンエネルギーなんていわないでね。。。


(フランツ・アルト氏講演の要旨)

 日本とドイツは戦後、奇跡的な復興を経て、社会福祉的な市場経済を確立しました。現在は、社会福祉的なものから、エコロジカルな社会経済の発展へと焦点が移ってきています。世界で起こっている数々の問題・紛争の実に70%が、エネルギ−関連のものから起因しています。ブッシュ米大統領が起こしたイラク戦争も、石油をめぐる戦争のひとつでしょう。しかし、世界中が取り合っている化石エネルギーは、数十年で枯渇してしまうことが予測されています。そうなると、先進国はもちろんのこと、第三世界の国々は発展する機会を失ってしまい、経済格差はますます広がります。私たちは、再生可能エネルギーに移行することが不可欠な時代に来ているのです。

 再生可能エネルギーの特徴は、無料で手に入ることです。10年後を見てみましょう。化石燃料の価格は倍増します。この価格の問題というのは、第三世界の国にとって大きな問題です。2004年、第三世界では、海外支援の費用を上回る支出を、エネルギーに費やしています。中国、インド、アフリカの発展は、化石エネルギーのままでは無理なのです。世界エネルギー機構は数十年で化石エネルギーが枯渇すると予測しています。50年後には天然ガス、ウランが枯渇し、120年後には石炭が枯渇するとされています。

 私は35年間、テレビのジャーナリストとして活動しているので、もし、テレビで環境問題を取り上げるとすれば、こうした内容の報道をするでしょう。最初のニュースですが、今日1日で100種類もの動植物が絶滅しました。3週間前に開催された種の保存をめぐるバンコク会議では、絶滅種は100種類ではなく150種類にのぼるという報告もありました。次のニュースですが、今日1日で3万ヘクタールの砂漠が地球上に作られ、人口が25万人増加し、1億トンの二酸化炭素が排出され、そして今日1日で自然が5万日かけて集めたエネルギーが燃やされました。

 このまま人類が突き進めば、すべての種の生存の可能性が脅かされ、数年後には天然資源を奪い合う戦争に突入するでしょう。それでは、これに対する解決策はあるのでしょうか?

 エネルギー問題はきわめて政治的なものであり、本来は存在しないものなのです。たとえば、太陽は、毎日1万5000倍のエネルギーを送っており、この自然エネルギーを使えば低コストのエネルギー供給が可能になります。すでに、EUではエコロジー経済の奇跡がはじまっています。

 たとえば、ドイツ人は現在、1平方メートルで15〜18リットルの灯油を必要とする家に住んでいます。太陽光発電、断熱効果を高めた省エネ住宅にすることで、灯油の消費を1平方メートルで2〜3リットルにまで抑えることが可能です。ほかにも、南はどちらにあるかを意識した建築を行うだけで、暖房エネルギーの半分は削減できるのです。さらに断熱効果を高めると、実に80%以上のエネルギーを削減できることが分かっています。高効率、省エネが必要ですが、もしこうした努力を続ければ、2050年までにはすべてのエネルギーを再生可能にすることができるのです。また、再生可能エネルギーには、500万人の新たな雇用が生まれるとも算出されています。

(EUにおける2050年のエネルギーシナリオ)
太陽40%
バイオマス30%
風力15%
水力10%
化石エネルギー5%

 
 石油会社大手であるシェルによる調査でも、石油のシェアが40%から8%まで落ちるというショッキングな結果が出ています。また、再生可能エネルギーは現在の2%から60%にまでシェアを伸ばすと予測されています。私は、この調査にもとづくテレビ番組を4本作り、シェルやテキサコなどの企業代表を番組に呼びました。

 そのときのシェルの代表が話していたのですが、10年後には先進国の人間ですら購入できなくなるほど石油は高価になるだろうとのことです。さらに、その代表は「シェルはソーラー・コンツェルンに生まれ変わる」と発言しました。その言葉通り、同社は、いぜん炭坑だった場所に、ソーラーセル工場を作ったのです。そこには、「石炭からソーラーへ」という看板がかかっていました。

 アメリカの石油会社は夢物語と批判しました。アメリカはまだ戦争をつづけるでしょう。しかし、英国の石油最大手であるBP社は、社名を「British Petrolium」から、「Beyond Petroleum」へと変更しました。シェルもBPも本気なのです。

 ドイツでは、政府が風力発電を買い取るという政策をはじめています。過去14年間で、われわれは1万6000基の風力発電機をドイツに設置しました。これにより、1200万トンの二酸化炭素を削減したのです。ドイツ人が答えた好ましいエネルギー源として、再生可能エネルギーがもっとも高くなっています。ちなみに、原子力発電を支持した人は16%しかいません。

 雇用については、風力発電だけで、5万人の雇用が創出されました。すべての分野では、15万人の雇用が増えたのです。風力発電は、当初は1台で35人分の電力しか供給できませんでしたが、現在では、1台で505メガワットを発電し、1万7000人の電力を供給しています。

 現在、風力発電は海へ向かっています。沖合いに風力発電機を設置するようになっており、この分野では、海に囲まれた日本は大きな可能性を持っているとも言えます。ソーラーセルでは、生産量、設置数でも日本が世界一です。それが輸出産業へと発展し、環境にやさしいビジネスが発展することになるでしょう。


(Q&Aセッション)

Q:政治家と企業の癒着、既得権益をいかに解決するか?

A:政治的にも経済的にも既得権益に結びついた力は非常に強い。ドイツでは、保守勢力は原子力との結びつきが、リベラルは石炭業界との結びつきがある。米国は共和党は石油業界との結びつきがある。デンマークでは、バイオマスでエネルギーの多くを農家はまかなっている。また、オーストリアでは一次エネルギーだけではなくすべてのエネルギーの15%をバイオマスから得ている。それは畑や森林で生育するエネルギー源のことを指す。オーストリアには2004年の段階で数十の自治体が100%のエネルギーをまかなっている。農家は、具体的な実行力をもち政治に参加している。

数年間、地域や個人で新たな動きをはじめる人々に送られる「ソーラー賞」を受賞したが、20年前すでにドイツでは経済的には利益にならないにもかかわらず、風力発電に投資していた。そういったひとつひとつの動きにより、保守政党は原子力と結びついていたにもかかわらず、電力を買い取る法律を制定せざるをえなくなった。結果、25万人が風力発電に積極的に投資している。既得権益を打ち破るには、下からの動きが必要になる。

国際的なレベルでは、日本はソーラー、ドイツは風力、デンマークやオーストリアでバイオマスなどのトップが出てきて、そこからベストは誰かといった競争が起こるべきだ。重要なのは分析書ではなく、ひとつひとつの先進的な事例である。それにより、ほかの地域も参考にすることができるだろう。


Q:化石燃料は、薬品やプラスチック製品などの原料にもなっていますが?

A:暖房のためだけでなく、化学製品や化学薬品に化石燃料を使っている。ドイツでは90%の化学製品は石油から。しかし、10%はバイオマスから得ている。ダイムラークライスラーは、15%の車の部品を再生可能なエネルギー(バイオマス)から得ている。首脳陣の1人は、インタビューのなかで20年以内に9割以上はバイオマスから材料を作ると答えた。実現可能かは、1920年にヘンリーフォードが行ったことを見れば明らかだろう。1924年にフォードの作った原料のほとんどは麻などのバイオマスから作られ、機能した。化石から得られる資源は植物で代替することができることが、常識になりつつある。

これから数十年は石油を必要とするだろう。だからこそ、家で暖房や車のために化石エネルギーを使うのではなく、ほかの大事なものに使うべきだ。


Q:あと30年後には石油がなくなると言われていたが、まだ続いている。石油は案外しぶとく残っているものでは?

A:70年代、私も同じような話を聞いた。アメリカ政府はいまだに石油がずっと存在すると思っている。私はジャーナリストであり研究者ではないので、世界中の石油を掘削して調べることはできないが、いろんな人から話を聞いてリサーチして出た結論にしたがう。環境学者、地質学者、石油会社などのさまざまな人に話を聞いた結果、そのうちの95%は40年−45年程度で石油がなくなると公表している。シェルのトップも40年と答えている。

シェルにとっての重要な問題は、石油価格が一般人にとっては手が出ないほど高いものになっており、代替エネルギーのほうが価格が安くなっているということだ。この研究成果を本として出版したのは、産業界に近いリサーチ会社で、「オイル交換」という本である。過去20年間において、大きな埋蔵量をもつ油田は存在せず、小さな油田しか見つかっていない。すでに、新たに発見した石油の5倍以上の石油を消費している。30年前の調査の前提条件と、いまの条件は異なったものになっている。だから石油は終わりに近づいていると言える。もし石油が長くもっても、もてばもつほど温室効果の危険に晒されているので、どちらにしても変わる必要がある。

Posted by hiroko at November 11, 2004 03:13 PM | TrackBack
Comments

くわしいレポートうれしいです。火曜は行きたかったけどミーティングなどがあってバタバタしてました。

しかしシェルもBPも本気ですね。先々週カナダとアメリカに行っていたときの機内誌で見た車の広告が電気自動車でした(Fordだった?)。石油価格が上がれば今のガソリンエンジン車が売れなくなることも当然同時に起きる訳で、この動きは理解できます。夏にはまだ目につかなかった気がするので最近の広告だと思うけど、アメリカの自動車メーカーでもすでに方向転換してるところはあるんだと再認識しました。

「暖房や車のために化石エネルギーを使うのではなく、ほかの大事なものに使うべきだ。」という視点すごく重要だと思います。この説明があれば、ケミカル業界も化石資源の将来を気にするでしょうから、エネルギー業界への方向転換圧力にもなるかもしれません。

ところでエネルギーでも「分散・自律」の考え方が重要なポイントになる気がします。今までの水力、火力、原子力は一カ所で集中的に大規模発電して高圧送電して分配してきたけど、これは重工業時代の考え方とシンクロして来たと思います。それに対してソーラーセル、風力、バイオマスなどは低電圧なのと発電量が比較的大きくないので、今までの発電所を置き換えられると思われてなかったですけど、至近距離での供給源として考えれば効果的なはずです。そうすれば高圧送電線使わなくてもよいはず。

でもこれ、エネルギー既得権企業のシェアを削るものなのも確かだから抵抗は予想されますが、先の短い化石燃料と扱いがやっかいな核分裂原子力燃料に依存することの危険性を理解できれば、方向転換できないことはないはずと思います。

Posted by: gt at November 11, 2004 04:26 PM

最近になってお声がかかって、バイオマスフォーラムの人と親しくしています。簡単な仕事のオファーが来てるんですが、プログラム(cgi)が絡んでるので少々手こずってます。

地元でRDF発電用の固形燃料開発プラントの反対運動をしていた側の人間なんですが、建ってしまったものは仕方ない。いかに安全に経費を削減して運営できるか見届ける義務がありますよね。

でバイオマスで何が出来るかと考えた時、農家から出る稲わらや材木屋さんから出る木屑を阿蘇郡で集めると、年間の灯油消費量3000万円分の燃料がまかなえるらしいんです。どこまで具体的に話が進んでいくかは未知数ですが、この企画を考えている京都大学火山研究所あがりの人に興味深々です。

あと観光店・食堂・ドライブイン・ホテルの生ゴミを集めて堆肥化とか面白そうな企画をいっぱい私に見せてくれました。今後の活動は要チェックかも知れません。

関係ないですけど、環境に配慮しようとすれば車に乗らないのが一番いいんですが、田舎なのでそうも行かず、会社の送迎用に買ったのはトヨタ・エスティマ・ハイブリッドでした。少し水深が深い水たまりを走るともう動かなくなりエンジン乗せ換えでした。
あと急にバッテリーがなくなり止ることが一回ありました。この車はまだ熟成されていないので、買い時が難しいですね。
初代プリウスは馬力がなかったですが、新型は余裕の加速性能です。ただ仕事に使うだけなら次もハイブリッドカーにするかも。

でもBMWとかって3万キロに一回(だっけ?)しか換えなくていい超高寿命のオイルを開発して、環境への負荷を減らそうとしていたり、パーツの保有年数もすごくて20年前近いバイクのパーツが取り寄せられてまた修理して乗れるというのが、BMWのよさかなあ・・・。
ある意味環境に配慮してるとおもうんですけど。いかが思われますか?

だいぶ話がそれちゃった、ごめんなさい。

Posted by: ss_ri at November 12, 2004 01:45 AM
Trackback
Post a comment









Remember personal info?